仏大統領選、危惧される「大衆迎合」
Japan In-depth / 2022年4月12日 20時18分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2022#15」
2022年4月11-17日
【まとめ】
・前回に比べ今回の仏大統領選は接戦の見通しだ。
・外交・安保が「票」になることは稀であるため、大衆迎合を強化したルペンの支持拡大が予想される。
・左派支持者がどの程度ルペンを支持するかに注目したい。
今週は英語表現ではなく、外交・安保の本筋から入りたい。筆者が気になったのは仏大統領選だ。主要メディアはマクロンとルペンの決選投票が接戦となる見通しを報じている。5年前と同じだが、マクロンは前回(66%を獲得)のように圧勝できるかは現時点でも不明。結果は欧州の将来を左右しかねないため、とても気になる。
決戦投票は24日だが、複数の仏メディアは予想得票率が「マクロン52%、ルペン48%」といった接戦の見通しを報じている。筆者は現時点でルペンの勝利を予想している訳ではない。だが、仮にマクロンが勝っても、仏内政はよりポピュリズム、ナショナリズムに傾き、EUの結束を乱す方向に進まないか、若干危惧している。
各種報道によれば、第1回投票には12人が立候補し、仏内務省集計ではマクロンが27.6%、極右のルペンは23.41%、急進左派のメランションが21.95%だったが、もう一人の極右ゼムールは7%程度、共和党、社会党の候補は惨敗した。仏内政に詳しい専門家は驚かない数字だろうが、よく考えれば恐ろしい結果だと筆者は思う。
5年前、筆者はこのコラムで次のように書いた。
●先週末の日曜日にフランス大統領選挙の投票があった。結果は、ある程度予測されていたこととはいえ、既存二大政党の敗北と二人のアウトサイダー候補の決選投票進出が決まったということ。気の早い連中は、5月7日の第二回投票でのマクロン候補の勝利をもう予測し始めている。
●ルペンとメランションの一騎打ちとなれば反EU候補同士の決選投票となっていた。そんな最悪の事態だけは回避できたと安堵している人も多いというが、問題はそれに止まらない。既存政党の不甲斐なさは目を覆うばかり。39歳のマクロンが大統領になってもフランスの政治社会状況が改善するとは思えない。問題はポスト・マクロンだ。
今の筆者の見立てはこうだ。今回の数字が凄いのは、5年後の今も、フランス内政の両極化、すなわち既存の「中道勢力」の弱体化が進んでいることを示す可能性があるからだ。5年前筆者はマクロンを「アウトサイダー」と表現した。政治家としてそれほど強力ではないと思ったからだが、そうした状況は今もあまり変わっていない。
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