EUで中ロ連携への警戒感高まる
Japan In-depth / 2022年4月16日 16時36分
村上直久(時事総研客員研究員、学術博士(東京外国語大学))
「村上直久のEUフォーカス」
【まとめ】
・EUは米国と共に、中ロ連携を警戒。
・EUのライエン委員長は、習近平主席にロシア支援に回ればEUとの関係悪化は避けられず、中国の利益にはならないと訴えた。
・中国は当面ロシアとの経済協力を続け、ウクライナ危機や欧州の安全保障に深く関与しない方針。
欧州連合(EU)にとって中国は最大の貿易パートナーだが、中国・新疆ウイグル自治区での大規模な人権侵害の疑惑が深まる中、中EU関係はぎくしゃくしていた。そこにロシアがウクライナに軍事侵攻。今度はEU側は米国とともに中ロ連携を警戒するようになった。
EUは4月に入ってオンライン形式で開かれた中国との首脳会談で、ロシアのウクライナ侵攻を支援すれば「中国の欧州での信用が大きく失墜することにつながる」と警告した。
EU側は中国に対し、制裁逃れや軍装備品の提供などでロシアを支援しないよう求めるとともに停戦に尽力するよう促した。
しかし、米紙ニューヨークタイムズは、中国の本心はロシア支援だとみているようだ。中国は国際社会に対しては、ウクライナでの戦争ではどちらにも味方せず傍観者であり、平和を希求しているだけだとしているが、国内では共産党は、ロシアを侵略者ではなく、(西側との関係において)長年苦しんできた被害者であるとのキャンペーンを展開し、中国がロシアとの強い絆を保つことは必須であると信じている節がある。
◇制裁破りの兆候なし
EU欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、中国共産党の習近平主席との首脳会談後の記者会見で、ウクライナに侵攻したことで信用を失ったロシアから国際企業が相次いで撤退している現状を挙げ、「企業は事態を注視し、各国がどういう立場を取るのか見極めている」とも指摘。ロシア支援に回れば中国の最大の貿易相手であるEUとの関係悪化は避けられず、中国の利益にはならないと訴えた。
一方、習主席は会談で、情勢安定化に向けた欧中の協調の必要性を強調しつつ、「各国の庶民に重い代価を払わせてはならない」と米欧の制裁に改めて反対の姿勢を示した。これに対してフォンデアライエン氏は「制裁を支持しないなら少なくとも邪魔をしないようにすべきだ」とクギを刺した。
アナリストらによると、中国が西側の対ロ制裁破りを行っている兆候はみられない。それどころか、中国の国営石油精製企業は、大幅な値引きオファーにもかかわらず、ロシアとの新たな石油購入契約の締結を避けているという。さらに中国最大の石油精製企業シノペックはロシアでの石油化学関連事業への投資をめぐる交渉を中断したという。
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