スー・チーさんに禁固5年の判決
Japan In-depth / 2022年4月30日 23時58分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・ミャンマーの民主化指導者アウン・サン・スー・チーさんに対し、汚職の容疑で禁錮5年の有罪判決。
・裁判は軍の影響下で行われ、その公平性、中立性に疑問符が付く。
・昨年のクーデター以降、既に1798人の市民が殺害され、人道上の危機が続いている。
ミャンマー民主化運動の指導者で2021年2月1日にミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍によるクーデターで転覆されるまで民主政府の実質的指導者だったアウン・サン・スー・チーさんに対し、軍政の強い影響下にある裁判所が、汚職罪の容疑で4月27日に禁固5年の実刑判決を下した。
スー・チーさんはクーデター発生と同時に軍政によって身柄を拘束され、首都ネピドーの自宅に軟禁状態にされ、過去のあらゆる行動を軍政がチェックした結果として多数の容疑で訴追され、裁判所に出頭する以外の外出を禁じられているという状況が続いている。
▲写真 東京で行われた、軍によるスー・チー氏の身柄拘束に抗議するデモの様子(2021年2月) 出典:Photo by Carl Court/Getty Images
現地からの報道などによると、4月27日、スー・チーさんが率いていた民主政党「国民民主連盟(NLD)」の首席大臣だったピョー・ミン・テイン氏からビジネスへの特別配慮と引き換えに現金60万ドルと金塊11.4キロをスー・チーさんが受け取ったとする収賄罪容疑で訴追を受けていた。
ピョー・ミン・テイン氏はNLDの重鎮でスー・チーさんを引き継ぐとみられていた人物だが、裁判の過程で同氏が汚職罪でスー・チーさんに不利な証言をしていたという。
■ 裁判の公平性、中立性に疑問
これについて、クーデター後に軍政に対抗するために民主政府関係者などを中心に組織された地下組織「国家統一政府(NUG)」のティン・ウー法務大臣は、同氏は軍政に強要されて告発、裁判での証言を行ったものとの見方を示し、裁判の公平性、中立性に大きな疑問を投げかけた。
スー・チーさんは2021年10月に弁護士と面会した際にこの告発に関して「ばかげている」と述べ、容疑に関して全面的に否定していた。
スー・チーさんはこれまでに今回判決が下された汚職容疑に加えてNLDが勝利した2020年の総選挙で不正があったとする選挙容疑、コロナ拡大防止対策が不十分だったとする公衆衛生法容疑、不許可の通信機を使用していたという通信法違反容疑など11件の訴追を受けている。
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