上海市のロックダウンと天津市長の死
Japan In-depth / 2022年5月5日 12時55分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・『上海晩春』なる動画は「ゼロコロナ政策」への市民の強い不満を表している。
・天津市長、廖国勲の死は中央紀律検査委員会による腐敗スキャンダルに対する厳しい取り調べが原因か。
・習近平政権の厳しい「ゼロコロナ政策」は「反習近平派」をあぶり出すためとの見方も。
今年(2022年)5月に入っても、同4日現在、依然、上海市は、約半数の地区でロックダウンが継続されている。
以前、本サイトで、上海市民の嘆きの声を集めた『4月の声』を紹介した。(参考記事:「上海「ゼロコロナ政策」に学生反発」)それに続いて、ロック調の『上海晩春』がSNSに登場(a)している(すぐに削除される)。
前者は、主に、4月以降、ロックダウンに抗議する市民の声を並べている。後者は、政府関係者や一般の上海市民の様々なシーンのビデオを短く編集した。どちらも、習近平政権の「ゼロコロナ政策」への不満の表れだろう。
周知の如く、上海市のロックダウンは人の自由な移動を厳しく制限している。そのため、市民は買い物に行けず、食料不足に陥った。他方、デリバリーフードは、値段が異常に高い。ある4人家族(両親と子供2人)は食べ物がなく、餓死するしかないので、マンションから飛び降り自殺をした(b)という。
習近平政権によるロックダウンに対し、上海の高層マンション住民は、夜毎、鍋を打ち鳴らして「ゼロコロナ政策」に抗議(c)を行っている。
また、4月27日、上海市嘉定区江橋鎮の住民たちは1ヶ月間のロックダウン後、大規模な抗議運動(d)を起こした。
江橋鎮の住民らが、居民委員会で生活必需品や正体不明の物資を発見したのである。住民らは日常生活品が不足しているのにもかかわらず、同委員会が住民らの物資を隠し持っていたのを知り、デモを行った。
一方、確かに、上海市から地元へ帰る人々も存在する。実際、上海市の市民39%は他省からやって来ている。特に多いのが安徽省出身者(9%)で、次いで江蘇省出身者(6%)である。一時、約1000万人以上が上海市から脱出していると噂されたが、これは“フェイクニュース”だった(f)ようである。
さて、上海当局は、明らかにコロナの死者を少なく発表している公算が大きい。上海市葬儀場の情報(g)によれば、次の通りである。
毎年、同市葬儀場では1日当たり平均397(自然死)のご遺体を焼却する。ところが、今年4月に入ると、突如、ご遺体の焼却数が2倍に増えた。1日当たり、約300余りの市民が不自然死(=コロナ死)を遂げるようになったのである。そこで、焼却が追いつかないので、葬儀場職員は夜を徹して働いているという。
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