岸田内閣のディープ・ステート?
Japan In-depth / 2022年5月6日 14時3分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・岸田文雄内閣は公の場での言明で、ほぼすべてすでに書かれた文書を読みあげている。
・岸田内閣の代表たちが読む台本はだれが書くのか。その内容は彼らの考えを正確に表現しているのか。
・政治家たちに一定の確実な考えがなく、作成係の考えが注入されている場合もあるのでは。ディープ・ステートを想像せざるを得ない。
岸田文雄内閣は首相の岸田氏をはじめ各大臣や官房長官まで公の場での言明はほぼすべてすでに書かれた文書を読みあげている。自分の言葉で発言する様子はなく、他の誰かが事前に書いた文章をただ読みあげるだけなのだ。この点、岸田内閣の代表たちは判で押したように、みな一律である。
この特徴については当コラムの今年3月6日掲載の「『岸田棒読み内閣』に物申す」という見出しの記事で報告した。当時は岸田内閣がまだ試運転に近く、その閣僚たちも公式の場での発言に慣れていないからなのか、とも感じていた。ところがそれから2ヵ月が過ぎても、その棒読み傾向はますます激しくなるばかりなのだ。
この岸田内閣の「読まなければ発言できない」という傾向は日本の国際的な印象にも大きな影を投げるだろう。対外的な発言をする日本の首相や外相が会談相手や聴衆をみずに、手元におかれた紙をみて、その記載を読みあげるだけ、というのでは異様である。
岸田政権の対外発信役の松野博一官房長官もいまもなお棒読み専門のようだ。政府の政策の発表はもちろんのこと、記者からの簡単な質問への答えさえ、用意された紙やノートを読みあげる。その間、うつむいて、テレビであれば、カメラの方をみない。つまり答える相手、語りかける相手の側に視線を向けないのだ。
林芳正外務大臣も同様である。アメリカのブリンケン国務長官と並んで立ち、簡単な声明を述べる際も白い紙を片手に持ち、そこに視線を向けながら、読みあげていた。ブリンケン長官が立ったまま両手にはなにも持たず、明らかに自分の頭脳と自分の口とで政策を語るという光景とは対照的なのだ。林外相は4月上旬のポーランド訪問の際にも、相手側の要人との共同発言などではいつも白い紙を片手に持ち、そこを読みながらというパターンが目立った。
政府の代表が重要な政策を明らかにする際に、正確を期すため、筆記された記述を読むという必要性は理解はできる。だがいかにも簡単な声明、たとえば、ロシアのウクライナ侵略を非難する際の「現状を武力で変更しようとする行為はいまの国際秩序の根幹を侵す」というような定番の言葉さえも、わが岸田政権の代表たちは用意された記述を読まないと発信できないようなのだ。
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