悪い円安と良い円安、どう違う?
Japan In-depth / 2022年5月7日 18時0分
一方で、これもコロナ禍後の供給制約やウクライナでの戦争もあって、国際的にエネルギー価格や食料品価格が高騰している。そうした下で円安になると、輸出企業にとってさえ、原材料の輸入価格と販売している製品の価格の関係が、採算悪化の方向に動く。これが交易条件の悪化と呼ばれている現象だ。
国内総生産(GDP)は、輸出等から輸入等を差し引いた純輸出等が増加しないとプラスにはならない。交易条件が悪化する下にあっては、輸出価格の上昇や輸出数量の増加がないと、その純輸出等が増えない。要するに円安によってGDPの成長が抑制されてしまう。これが悪い円安なのだろう。
現状、輸出価格は上昇しているようだが、2021年度の貿易収支が2年振りに赤字となったことからも分かる通り、輸入の増加で純輸出が増える展開にはなっていない。どうも良い円安の恩恵も薄そうだ。そうした状況で急速に円安が進むことは、結局のところ日本経済にとってはプラスではないとの認識が広がり、昨今、悪い円安論がしばしば言われるようになっているのだろう。
▲写真 第1回貿易交渉を控え、横浜港で出荷を待つ日本車(2019年4月15日、日本・横浜) 出典:Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images
■ 金融政策と為替レート
ところで、現状の急速な円安をもたらしている主たる要因は、内外の金融政策スタンスの違いだ。米国では、40年振りと言われる高インフレになっており、中央銀行である連邦準備制度(FRB)はその抑制のために金融引き締めを急いでいる。
5月3~4日に開催された金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)では、3月の会合に続いて政策金利の引き上げが決定された。それも、これまでは長らく0.25%刻みの変化であったのに対し、0.5%の幅での政策金利の引き上げとなった。これは2000年以来のことだ。さらにパウエルFRB議長は記者会見で、6月、7月のFOMCでも、同じ幅での金利引き上げが検討されると発言した。
これに対し日本銀行は、「デフレからの脱却」を確かなものとするため、これまでの金融緩和スタンスを修正しない姿勢をはっきりさせている。金融調節においても、10年もの国債の流通利回りが0.25%以上の水準に上昇することのないよう、対応を強化している。こうした日米の中央銀行の金融政策スタンスの明確な違いにより、内外の金利差がさらに広がり、それがここ数カ月での急速な円安に繋がっている。
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