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陰謀説の危険 その1 被害妄想の構図

Japan In-depth / 2022年5月8日 17時0分

アメリカでの近年の典型的な陰謀説といえば、2001年9月にニューヨークとワシントンで起きた9・11同時多発テロ事件の犯人についてだろう。このテロはイスラム原理主義のテロ組織「アルカーイダ」に所属する合計19人ほどの青年たちにより実行され、そのテロ行動を命じたのはオサマ・ビンラーディンだった、という事実が立証されてきた。





だが陰謀説では「このテロを実行した真の犯人はときのブッシュ政権であり、ユダヤ人たちはその計画を事前に知り、その日は出勤しなかった」とされる。この説を裏づける証拠は提示されることはない。









写真)同時多発テロで世界貿易センターに飛行機が突入した瞬間 2001年9月11日 アメリカ ニューヨーク
出典)Photo by Spencer Platt/Getty Images





陰謀説の研究はアメリカで多くの学者や専門家によって手がけられてきた。そのなかでもとくに権威のある研究とされるのは著名な歴史学者ダニエル・パイプス氏が1990年代に出版した「陰謀=被害妄想はいかに繁茂し、どこから発生するのか」と題する書である。





パイプス氏は長年、ペンシルベニア大学教授を務めたほか、民間研究機関の「外交政策調査研究所」と「中東フォーラム」の所長をも歴任した学者である。彼のこの書は多数の国で語られる陰謀説を多角的に分析していた。









写真)「陰謀」ダニエル・パイプス著
出典)amazon





同書によると、陰謀説とは実際には存在しない陰謀、あるいは存在する証拠のない陰謀を存在すると断言する主張であり、往々にして架空の陰謀への恐怖を強調することだという。陰謀説の歴史は十字軍の時代にさかのぼるほど古いが、19世紀以降、「世界制覇を狙う」式の国際的な陰謀説が多く、その実行役は秘密の結社、とくにユダヤ民族だとされることが頻繁だとされる。





パイプス教授の著書によれば、陰謀説には全体としてまず以下のような特徴があるという。





▽陰謀説はその内容が具体性に欠ける。





▽陰謀説は被害妄想が出発点となることが多い。





▽陰謀説は幻想や迷信をあおる。





▽矛盾や背反が多く、そのことこそが陰謀の証しだとする。





▽選別的でペダンティック(学識をてらう)な歴史を引用する。





パイプス氏のこの書によると、陰謀説はさらに以下のような、誤った前提を設けている場合が多い。国家や社会や人間集団を眺める場合の前提、ということである。





▽人間集団のすべての目標は権力獲得にある。





▽ある現象から利益を受ける勢力がその現象を支配する。





▽物事の外見は常に偽りであり、隠された部分に真実が存在する。





▽何事も偶然や失策からは起きず、特定の人間集団の意思から起きる。





以上の「前提」は物事をあるがままには絶対にみない、という態度に総括される。そうした態度は少なくとも普通ではない。一般的ではなく、多数派でもない。





(その2につづく)









トップ写真)ウクライナ大統領とブリンケン米国務長官およびオースティン米国防長官との会談 (2022年4月25日 ウクライナ)
出典)ウクライナ大統領府





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