【ファクトチェック】Tweet「ブチャの大虐殺はウクライナ軍がやった」⇒根拠不明
Japan In-depth / 2022年5月8日 23時54分
この兵器は「砲弾1発で8000本のダーツを発射する榴散弾の一種で、戦争法違反の無差別殺傷兵器」であり、
「このD-30砲弾は今紛争でロシア軍は使用しておらず、ましてやブチャで活動した空挺部隊は、そもそもそのような砲弾は扱わない」
「解剖の結果、民間人は明らかにウクライナ軍のD-30砲弾によって死亡したことが明らかになった」
「フランス国家憲兵隊の法医学部門の専門家18人と、キエフの法医学調査チームが調査した結果、両手を縛られて銃などで殺害された遺体には、そのクラスター爆弾のパーツが埋め込まれたケースがあった」
などとツイートした。
しかし、今回取り上げられた口径122mmの砲弾はウクライナ固有の武器ではない。かつてソ連が開発した旧東側の標準武器であり、名前が挙げられた牽引方式のD-30榴弾砲や自走砲型と呼ばれる自動車搭載形式を含めて数万門が製造されている。旧東側ブロックだけではなく商業輸出や軍事援助で第3世界にも普及しており砲弾も各国で作られている。また当のロシアもいまだに保有している。ウクライナ軍がこの武器を使用して虐殺を行ったと決めつけることには無理がある。
今回の虐殺に、この榴弾砲が発射したフレシェット弾(ダーツのような銃弾を子弾として多数内蔵した砲弾)が使われたとしても、どちらの国の榴弾砲から発射されたのか、現時点ではわからない。したがって、仮に遺体からダーツが発見されたとしても、どちらの国の仕業か、断定はできない。
▲写真 教会の集団墓地の近くに埋葬された母親と2人の子供たちの遺体を発掘する法医学チーム(2022年4月12日、ウクライナ・ブチャ) 出典:Photo by Anastasia Vlasova/Getty Images
一方、このツイートの根拠となっているスペインの「mpr21」の記事が出る前、4月3日のワシントンポストの記事は、「ロシア軍がウクライナの民間人を大量虐殺した」と正反対の内容になっている。
ワシントンポストによると、ウクライナ政府はブチャにおける虐殺の調査をICC(国際刑事裁判所)に要請しており、この調査の正式な結果が出るまでは、どちらが一般市民の虐殺を行ったかを断定することはできない。
よって、今回の122mm砲弾を使った虐殺をウクライナ軍が行ったとした当該ツイート、ならびに情報源となった「mpr21」の記事は、「根拠不明」と判断する。
情報の受け手である私たちは流されてきた情報に対し、出所を把握し、信憑性があるかどうかの判断をしてから、「いいね!」や「リツイート」をするのが望ましい。そうでないと、誤情報もしくは根拠があいまいな情報の拡散を行うことになってしまう。
【Japan In-depthファクトチェックポリシー】
Japan In-depthは、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、ファクトチェックを実施しています。FIJが定めたガイドラインに準拠して、言説の真実性・正確性の評価・判定を行います。政治家、有識者の発言、メディアの報道、ネット上で拡散されている情報等、社会的に影響の大きな言説を対象とします。判定基準は以下の通りです。
トップ写真:墓地に殺害された民間人の遺体を降ろす作業員(2022年4月7日、ウクライナ・ブチャ) 出典:Photo by Chris McGrath/Getty Images
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