ロシアでクーデターが起きる?気になるプーチン政権の「余命」その1
Japan In-depth / 2022年5月20日 18時0分
「(ロシア政府の論理によれば)反ユーラシア的な軍事同盟であるNATOの勢力範囲が、東方に拡大することは看過できない」
という大義名分のもとに始まった。また、3月のシリーズでも最初に述べたが、プーチン大統領は当初、ウクライナなど4日もあれば屈服させられると考えていたようだ。
それが、今次フィンランドとスウェーデン(以下、煩雑を避けるため〈北欧2カ国〉と呼ぶ)がNATOを実現したならば、ロシアの西側と国境を接する国々は、現在紛争中のウクライナと事実上ロシアの傘下にあるベラルーシを除いて、すべて「反ユーラシア的な軍事同盟」の旗の下に集まることになってしまう。
ちなみにNATOの規定によれば、新規加盟には加盟国すべての同意が必要とされており、トルコが難色を示しているとも伝えられるが、この説得はさほど難しくはないだろう。
実はここに、かなり大きな問題が孕まれているのだが、これについては項を改めさせていただく。
もうひとつ、やはりNATOの規定により、紛争当事国は加盟できないことになっていることから、ロシアがフィンランドに対して小規模な国境紛争を仕掛けるのではないか、と危惧するような声も、16日までは聞かれていた。
しかし、プーチン大統領の発言を注意深くフォローしていくと、彼が「報復も辞さない」案件とは、NATOの「軍事インフラが国境付近まで拡大すること」に限定されている。
これは、北欧2カ国の加盟それ自体は阻止できない、という判断ではないだろうか。
と言うのは、もともとNATO軍には、潜水艦から発射できる上に、核弾頭搭載可能な巡航ミサイルや弾道ミサイルを多数実戦配備しているので、北欧2カ国の領域にミサイル基地が設けられるか否かが、双方の軍事バランスにとって決定的な要素にはなり得ない。
カリブ海にミサイル基地を設置する動きをめぐって、米ソが核戦争の一歩手前までいったとされるキューバ危機は半世紀も前の話なのだ。
逆に言えば、プーチン大統領としては、ミサイル基地など「軍事インフラ」が北欧2カ国の領域に配備されなければ「オウンゴール」の愚を犯したわけではないと主張する余地もある。
以上を要するに、NATOとしては、プーチン大統領が核のボタンに手をかける可能性はかなり低くなったと見て、真綿で首を絞めるようにロシア弱体化を目指す戦略に自信を持ちはじめているのではないだろうか。
こうした流れの中で、冒頭のコメントが発せられたわけだが、この評価は難しい。
ひとつには、味方の士気を鼓舞するための「大本営発表」的なものではないのか、という疑いを捨てられない。しかしながら、米国がプーチン政権の内情について、私など思いも及ばないレベルの情報を収集できていることは間違いないようなので、決して無視はできない話である。
ひとつだけはっきりしているのは、プーチン大統領によるウクライナ侵攻が戦略的に頓挫したのは、情報戦で後れをとった、ということだ。
しかし、そこにすべての原因があると決めつけるのも、やはり誤った判断を招きかねない。
次回は、ロシア自慢の機甲戦力が機能しなかった原因について考える。
トップ写真)ブリュッセルにあるNATO本部
出典)Photo by Thierry Monasse/Getty Images
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