ロシア戦車が惨敗した理由(上)気になるプーチン政権の「余命」その2
Japan In-depth / 2022年5月24日 18時0分
第二次大戦後には、兵器の発達と戦術の多様化が並行して進み、水陸両用戦車や輸送機からパラシュートで投下できる空挺戦車が登場した。これらは軽戦車が形を変えてよみがえったものと考えてもよいが、単に戦車と呼ぶ場合は、おおむねMBTを指すというのが軍事用語として常識に近いものとなっており、その先鞭をつけたのがT-34というわけだ。
5月9日には、モスクワで戦勝記念日(ナチス・ドイツとの戦争に勝利した日)のパレードが行われたが、今年もT-34の一群が行進に参加していた。「大祖国戦争」を勝利に導いた戦車であると、ソ連邦崩壊後も賞賛され続けているわけだ。
▲写真 対独戦勝記念日に向け、リハーサルの行進で展示されたT-34/85戦車(2022年5月7日) 出典:Photo by Contributor/Getty Images
その後の戦車開発の歴史を逐一フォローして行くとなると、とても紙数が足りないので、今次のウクライナ侵攻で、よくも悪くも注目されたT-72にスポットを当ててみよう。
1973年から量産が開始された、ソ連邦地上軍(陸軍とは言わなかった)のMBTであるが、時代を先取りする新機軸をいくつも採用していた。
代表的なものが、自動装填装置と複合装甲である。
まず複合装甲から説明させていただくと、読んで字のごとく複数の素材を組み合わせて造った装甲板のことだが、二枚の鋼板の間に合金やセラミックや強化プラスチックなどの素材を挟んだ「サンドイッチ構造」にすることで、均質圧延鋼板(一枚板の装甲板と思えばよい)に比べ、耐弾性がかなり向上する。最近では合金とセラミックを複雑な形に組み合わせた「ハニーカム(蜂の巣)構造」も実用化されている。
▲写真 ロシア製戦車T-72(2015年5月9日 ウクライナ・ドネツク) 出典:Photo by James Sprankle/Getty Images
もうひとつの自動装填装置だが、こちらも読んで字のごとく、砲弾を発射した後、次弾の装填作業を機械化したものである。それまでの戦車は、車長、操縦手、砲手、そして装填手と計4名の乗員を必要としていたが、T-72では装填手が不要となったため、乗員3名で運用できるようになった。
こうした新機軸を採用した一方、エンジンは高出力のガスタービンやマルチフュエル(ディーゼル油以外にも、ガソリンや航空用燃料で動かすことができる)ではなく、信頼性の高いディーゼルを採用した。同世代の西側戦車に比べて軽量コンパクトでもあり、不整地での機動性能も良好であった。
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