ロシア戦車が惨敗した理由(上)気になるプーチン政権の「余命」その2
Japan In-depth / 2022年5月24日 18時0分
さらには、車高が低く抑えられ、砲塔はお椀を伏せたような形になっている。
これは大戦後の旧ソ連製戦車に共通するデザインで、被発見率・被弾率ともに低い上、避弾径始(ひだんけいし)の点でも優れていた。避弾径始というのは、銃砲弾が直角に命中した場合は、その貫通力をまともに受けるのに対し、斜面や曲面で受けた場合はかなり減殺される効果のことである。当たりようでは、信管が作動することもなく、滑って飛び去ってしまうことさえあるのだ。
主砲は125ミリ滑腔(かっこう)砲。
それまでの戦車砲は、砲身内部に溝が刻まれ、砲弾は高速回転しつつ撃ち出すことによって弾道を安定させるライフル砲が主流だったが、ソ連邦地上軍はいち早く滑腔砲を採用した。ライフルが刻まれていない代わりに砲弾に安定翼を取り付けるというコンセプトで、砲身寿命が長くなる利点がある。ちなみに現在では、自衛隊を含む西側の戦車でも滑腔砲が主流となっている。
加えて前述の自動装填装置の採用は、戦場生存性の向上にも寄与すると考えられていた。
被弾率がもっとも低い車体底部に砲弾を並べて格納し、弾頭と装薬を自動的に装填してゆくという方法は、ただ単に砲弾を車内に並べていた西側の戦車より、はるかに安全だとされていたのである。
ことほど左様に、攻撃力・防御力・機動性のバランスが取れた傑作戦車と称されたのがT-72で、1980年に勃発したイラン・イラク戦争では、イラク軍のT-72が、イラン軍の英国製チーフテン戦車を多数撃破し、実戦でも名を挙げた。T-72より10トン以上も重く、分厚い装甲を誇るチーフテン戦車だが、125ミリ砲弾はこれを正面からやすやすと貫通することができたという。
ただしこれは、40年も前の戦歴である。
その後に起きたことを、次回解説しよう。
(その3につづく。その1)
トップ写真:高速道路で車を止めて、破壊されたロシア軍の戦車を撮影する人々(2022年5月20日 ウクライナ・キーフ) 出典:Photo by Christopher Furlong/Getty Images
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