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核抑止とはなにか 兼原元国家安全保障局次長と語る その2 バイデン大統領の軍事忌避の代償

Japan In-depth / 2022年5月26日 18時0分

核抑止とはなにか 兼原元国家安全保障局次長と語る その2 バイデン大統領の軍事忌避の代償




古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)





「古森義久の内外透視」





【まとめ】





・軍事手段を否定するアメリカが対ロシアの姿勢はロシアの武力行動を助長した。





・日本はバイデン政権の軍事忌避の姿勢を危惧しなければならない。





・バイデン政権は総合的な要素を安全保障に盛り込み、抑止や防衛とする「統合抑止」戦略という概念を打ち出してきた。





 





古森: ウクライナ侵攻は、日本にとって最大の同盟国であるアメリカの無力さを露呈させました。バイデン大統領は、侵攻が始まる前から「(アメリカは)軍事介入はしない」と明言し、「ウクライナに殺傷性のある兵器を提供しない」とも発言しています。着々とロシア軍がウクライナ国境に集結しているときに、軍事手段を否定することは「ロシアさん、どうぞ侵攻してください」と言っているに等しい。





兼原: プーチンは戦国武将のような男ですから、米軍が軍事介入しないのであれば、「じゃあ、好きなようにやらせてもらおうか」と考える。バイデン氏が「一定限度を超えれば米軍・NATO軍が介入する」と言っておけば、プーチンは侵攻しなかったでしょう。





古森: バイデン氏の安全保障政策は、「これはしません」という、やらないことをまず公言するネガティブリストの方式です。やること、やるかもしれないことを明言しないのです。冷戦期のカーター元大統領がソ連に友好的だったように、民主党には「敵に善意を示せば、相手も善意をみせる」という伝統的な考え方が存在する。バイデン氏も、ロシアに善意を示せばロシア軍が侵攻を思いとどまると考えていたのでしょう。





兼原: 民主党は〝いい人〟の集まりなので、ある意味で日本の宏池会と似ています。





古森: ただ、カーター政権でソ連がアフガニスタンへの侵攻を開始したのは、アメリカの善意や友好によって、大胆な軍事行動をとってもだいじょうぶだと思わせたわけです。ロシアに善意を示しても彼らが思いとどまることはありません。





 侵攻が始まる前、バイデン氏は「経済制裁は侵攻を抑止できる」と述べていましたが、ロシア軍が侵攻を開始すると、「経済制裁がプーチンを抑止することはない」「経済制裁はそもそも軍事侵略を抑止できない」と真逆のことを言い出した。





兼原: 経済制裁の効果が出るのは1年後ですから、抑止力にはなりません。アメリカの戦い方は孫子の兵法ですので、まずは外交戦、情報戦、経済戦によって追い詰め、最後に軍事介入をしようとする。この作戦は「DIME」と呼ばれ、今回の戦争でも反ロシアの国際世論を形成して、ロシアをSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出し、ロシアの中央銀行の外貨準備口座を凍結しました。





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