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核抑止とはなにか 兼原元国家安全保障局次長と語る その3「日本を核で海底に沈める」?

Japan In-depth / 2022年5月27日 18時0分

古森:アメリカの核抑止戦略は、ソ連の核を想定して構築されてきました。しかし、日本の国家安全保障にとって現実の脅威となるのは、既存の核抑止戦略の外からやってきた中国や北朝鮮が保有する核です。


 中国は2021年7月、「日本が台湾有事に軍事介入すれば、中国は即座に日本への核攻撃に踏み切る」という戦略をまとめた動画を公開しています。中国は「核先制不使用」を謳っていますが、動画では「日本は悪い国だから例外的に核を使ってもいい」とまったく身勝手な主張をしている。北朝鮮も「日本を核で海底に沈める」と公言しています。


兼原:中国の台頭によって、世界の戦略的重心が北東アジアに移りつつあります。中国の軍事費は日本の5倍を超え、日本をターゲットにした中距離核ミサイルを2000発所有していますが、対する日本はゼロ。いまの中国軍は戦前の日本陸海軍と同じで、アジアに敵はいないと言っていいほど強く、アメリカでさえ一蹴できる相手ではありません。これほど強大な軍事勢力が日本の真横に現れたのは、歴史を振り返っても元寇、幕末、冷戦初期だけです。


 これまでのように欧米中心の核抑止議論を座学で勉強している場合ではありません。冷戦期に欧米でやっていたような、具体的な紛争を想定したシナリオベースの核抑止論を、北東アジアでもやらなければならないのです。


古森:シナリオベースで考えたとき、核の恫喝をされる可能性がもっとも高いのは台湾有事です。アメリカの対外戦略専門家の間では、「次は台湾か?」という疑問が真剣に提起されるようになりました。


兼原:台湾有事が起これば、米軍は日米安保条約第六条に従って、台湾防衛のために日本の基地から出撃する可能性が高い。米軍が出撃すれば、日本は周辺事態法に基づく後方支援や集団的自衛権行使となりますので、高い確率で台湾有事は日本有事になります。


 そこで習近平が「米軍に基地を使わせるな」「自衛隊が参戦すれば日本に核攻撃をする」と、核の恫喝をしてきたとしましょう。日本政府は、「アメリカの核の傘があるから大丈夫」と習近平に反論できるでしょうか。核の傘が本当に機能する確証がない日本政府は、「アメリカさん、お願いですから米軍基地を使わないでください」とアメリカにお願いするしかないでしょう。


古森:そうなれば日米同盟は終わり、中華人民共和国日本自治州が誕生します。


(その4につづく。その1、その2。全5回) 


 ☆この記事は月刊雑誌『WILL』2022年6月号掲載の古森義久、兼原信克両氏の対談「核を防ぐのは核だけ」の転載です。


トップ写真)2022年に冬季オリンピックが北京で開催されることを発表する習近平国家主席。2022年2月4日。


出典)Photo by Anthony Wallace - Pool/Getty Images


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