バイデン大統領「台湾防衛」発言の真意
Japan In-depth / 2022年5月29日 11時0分
北京の“虚構”に対し、ワシントンは、その“虚構”にお付き合いしてきたのである。
以前、本サイトで紹介した通り、「台湾関係法」の条文には、米国による「台湾防衛」がしっかり明記されている。
重要なのは、同法第2条のC項(d)である。この点は強調しても、し過ぎる事ないので、再度取り上げよう。
「C項 本法律に含まれるいかなる条項も、人権、特に約一千八百万人の台湾全住民の人権に対する合衆国の利益に反してはならない。台湾のすべての人民の人権の維持と向上が、合衆国の目標であることをここに再び宣言する。」
この「台湾人の人権の維持・向上」の部分を読めば、明らかに米国の対台湾への意図がわかるだろう。そもそも、「台湾人の生命と財産」が守られなければ、彼らの「人権の維持・向上」など無意味である。
多くの人がその点を見落としているので、「台湾関係法」の神髄が読み取れないのではないか。
別の角度からも見てみよう。本来、“外国である台湾”を米国が国内法で守ると言っているのだから、米国にとって台湾は“自国領土”を意味する(つまり、台湾は、グアムとサイパンなどの米“準州”と同等である)。したがって、米国による台湾防衛は、自国領土防衛と“同義”ではないだろうか。
以上のように、米国は“建前”(「1つの中国」政策や「曖昧戦略」)と“本音”(「台湾関係法」)を使い分けているのかもしれない。これは、米国の典型的な“二枚舌外交”である。これに、世界中の学者・研究者やメディアまで、翻弄されてきたのではないだろうか。
▲写真 台湾プロ野球(CPBL)の年間王者を決める「台湾シリーズ」第1戦、中信ブラザーズvs統一ライオンズ戦を台中インターコンチネンタル球場にて観戦する、蔡英文総統。(2021年11月27日、台湾中部・台中市) 出典: Photo by Gene Wang/Getty Images
ところで、王文斌・中国外交部(外務省)報道官は、バイデン大統領の発言について、いつもの通り「強い不満と断固とした反対」を表明(e)した。そして、「主権や領土保全など中国の核心的利益に関わる問題では、中国に妥協や譲歩の余地はない」と語った(ただし、北京の主張する台湾領有の根拠は希薄である)。
一方、昨年10月同様、台北はバイデン大統領の演説を歓迎し、欧江安・外交部報道官は「心からの歓迎と感謝」を表明している。
<注>
(a)参議院議員の青山繁晴氏も指摘(青山重晴の道すがらエッセイ)
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