RE100化でデベロッパーも発電する時代へ
Japan In-depth / 2022年5月29日 23時0分
こうした中、大手デベロッパーの動きが加速している。
■ デベロッパーの取り組み
三菱地所株式会社は、2022年度に東京都内・横浜市内に所有する全てのオフィスビル、商業施設の電力を再生可能エネルギー由来(以下、再エネ電力)とする。
既に2021年4月から東京駅前の丸ビルや新丸ビルなどの丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町)の約8割のビルで再エネ電力を導入しており、今年度までに丸の内エリアで所有する全ての物件への導入を達成し、更にそのエリアを東京都内、横浜市内にまで拡大して再エネ電力を導入する予定だ。
また、三井不動産株式会社は、保有する施設の共用部やテナント等に対し、使用電力に非FIT水力発電の環境価値が付いた「グリーン電力提供サービス」を2022年春より提供開始した。対象施設は約180施設、2030年度までの国内保有全施設のグリーン電力化に向けて展開加速中だ。
東急不動産株式会社も、保有するすべてのオフィスビル・商業施設において、入居者の使用電力も含め、2022年にすべて再生可能エネルギー由来の電力へ切り替える。2025年としていた全オフィスビル・商業施設の再エネへの切り替え目標を前倒しする。
実は同社は他のデベロッパーとは一線を画し、自社で再エネ事業に取り組んでいる。太陽光発電施設や風力発電施設を展開しているのだ。再エネ専業会社である株式会社リエネを設立、2022年4月末時点で全国81事業所、定格容量1311MW(メガワット)は。一般家庭約62.6万世帯分に相当する。CO₂削減量は約123万9000トン・年だ。
▲写真 すずらん釧路町太陽光発電所 出典:東急不動産株式会社
自社で発電施設を擁するメリットは何か?
都会のオフィスビルなどの屋上は狭く、十分な量の太陽光パネルを設置することは出来ない。したがって、RE100を達成しようとしたら、「非化石証書」付き電力に切り替え、それをテナントに提供するしかない。しかし、今後より多くの企業がRE100化を進め、「非化石証書」付き電力の需要が増え続ければ、当然コストが上昇する。
東急不動産は、自社の発電施設に紐付いた「非化石証書」を利用することで、こうした価格変動リスクをヘッジすることができるのだ。当然、テナントが入居を決める際の大きなインセンティブになる。
新型コロナ禍により、働き方は大きく変わった。オフィス不要論も台頭したが、ウィズコロナ時代になってオフィス回帰の動きも見られる。同時に、オフィスに対するニーズもまた変化した。
テナントとして入居するのに、どのようなデベロッパーが開発したビルなのか、より重要になってくる。また提供されるグリーン電力の質やコストも問われるようになるだろう。
脱炭素社会に向けて、企業間の競争はより複雑になっていく。従来のビジネスの枠にとらわれないチャレンジが求められよう。
(了)
トップ写真:リエネ松前風力発電所 出典:東急不動産株式会社
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