またしても「クルド人斬り捨て」か 気になるプーチン政権の「余命」その5
Japan In-depth / 2022年5月31日 7時0分
最盛期と称される17世紀後半には、その領土は中東から北アフリカ、アラビア半島の北半分、さらには現在のハンガリー、ブルガリアにまで及び、人口は3億5000万人以上と推定されている。
昭和の日本で使われた歴史教科書には「オスマン・トルコ帝国」などと書かれていたが、これは不正確な呼称で、今では使われていない。そもそもオスマン帝国は多民族国家で、これをトルコと同一視したのはガイジン(西欧のキリスト教徒)の思い違いなのだ。
話を戻してクルド人だが、武芸に秀でた人が多く、オスマンの軍隊において、中核的な役割を担っていた。
話が前後してしまうが、12世紀にイングランド王リチャード1世「獅子心王(リチャード・ザ・ライオンハート)」らが率いる第3次十字軍を相手に、最期までエルサレムを守り抜いたサラーフッデーンもクルド人の将軍である。こちらも一般に「サラディン」と表記されるが、やはりラテン語訛りが誤って伝わったものらしい。
歴史の皮肉と言うべきか、このように「イスラムの守り手」を自認してきたクルド人は、第一次世界大戦においてオスマン帝国が敗戦国となり、1922年に滅亡するや、前述のように「国家を持たない最大の民族」となってしまった。アラブ諸国が英仏の後押しを受けて独立を果たしたのに対し、オスマンにおける「体制側」であったクルド人は、自分たちの国を持つことを認めてもらえなかったのである。
この結果、トルコ、イラク、イランなどの領域に分かれ、それぞれの国で少数民族となり、独立運動と迫害が繰り返されることとなった。
典型的な例がトルコで、独立後、最初に誕生した左翼政権はオスマンの伝統を全否定し、かつ「一民族一国家」の立場から、クルド語の使用を規制するなどした。このことがかえってクルド人の民族意識を高揚させ、独立運動を牽引するクルディスタン労働者党(PKK)との対立が激化した。現在に至るもトルコ政府はPKKをテロリスト集団と規定している。
度しがたいのは米国はじめNATO諸国の態度で、ここで詳細な経緯を振り返る紙数はないが、1990年代、イラクのクルド人については「サダム・フセインによる迫害」を非難して、空爆まで行ったが、トルコのクルド人については、テロリストだとするトルコ政府の主張を鵜呑みにするどころか「拡散」したのである。これをダブル・スタンダードと言わずしてなんと言おうか。イラクとの戦争には、国境を接するトルコの協力(基地や補給路の提供)が不可欠という事情があったとは言え、これはいささかひどい。
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