現、元首相「対露」で丁々発止の論戦 岸田氏、安倍外交検証の重要性認める
Japan In-depth / 2022年6月3日 18時0分
岸田首相の答弁は一貫して強気だったが、安倍氏はシンガポール合意の後、「われわれの主張をしていればいいということではない。それで戦後70年間、一歩も進まなかった」(合意直後の衆院予算委員会)などと述べ、2島返還への方針変更だったことを明確に認めている。
それを考えれば、岸田首相の反論も勢いを失うというべきだろう。
■元首相「検証がリアリズム外交の一歩」
論戦の最後で、元首相は「経済協力で領土が返ってくるという甘い幻想を振りまいたのは安倍元総理だ」「2島返還は将来、北方領土交渉が再開するときに負の遺産になる」と重ねて安倍対露外交を激しく非難。加えて、岸田首相が「新時代のリアリズム外交」を標榜していることに関して、「安倍外交以降の問題をしっかりと政府の中で総括するのが、その一歩だ」と迫った。
■首相「経緯を念頭に、領土考えるのが重要」
岸田首相は「2014年以降の対露外交のありかたは不適切だったとは思わない」と反論しながらも、「これまでの日本外交がどうであったのかをしっかり振り返りながら、前を見つめなければならない」「現在の状況に至った経緯を頭に置きながらロシアとどう付き合っていくのか、北方領土問題にどう取り組むのか、考えていくのは重要なことだと思う」とも述べた。
実際に検証作業を行うかはともかくとしても、安倍対露外交が、検証に値することを認めた発言であり、岸田首相にとっては、ぎりぎりの答弁だったろう。
■追及されるべきは安倍元首相その人
首脳同士の丁々発止は、大きな主張で平行線のまま終わったが、この間、元首相は野党議員にありがちな声を荒げて罵倒することはなく、理詰めで追及。岸田首相も、自らの外相当時の動きに詳細に言及しながら、丁寧に所信を展開した。
岸田首相は、そうした表情は一切見せなかったが、内心、野田元首相の主張に同感していたのかもしれない。
というのも、昨年秋の就任以来、安倍政権の方針を修正、「4島の帰属を解決して平和条約交渉を進める」と従来の日本政府の基本方針に明確に立ち返っているからだ。
本来なら、衆院第一委員室の岸田首相の席に安倍氏その人が座り、〝証人〟として、国民の信を問うこともなく「2島返還」を強行しようとした失政について、国民に説明、謝罪すべきだったろう。
1日の論戦終了後、議員会館の野田事務所に、有権者からの電話が相次いだという。「よく言ってくれた」という称賛がほとんど、中には「自民党支持者だが、全く同感だ」というのも何件かあったという。
トップ写真:ロシア訪問でプーチン大統領へ表敬する岸田元外務大臣
出典:外務省 岸田外務大臣のロシア訪問
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