ネパールに接近する中国
Japan In-depth / 2022年6月13日 18時0分
中村悦二(フリージャーナリスト)
【まとめ】
・理論包蔵水力発電、開発可能水力発電共に世界4位のネパールが近隣諸国との電力貿易に積極姿勢を示している。
・中国もネパールへの投資が目立ち、電力貿易にも関心を示している。
・東南アジア諸国連合(ASEAN)でも域内での電力融通が検討課題に挙がっている。
理論包蔵水力で中国、インドなどに次ぐ4位の83,000MW(8,300万kW)、開発可能水力が同じく4位の42,000万MWと推定されているネパールが、近隣諸国との電力貿易に積極姿勢を示している。インドとは2014年10月に「電力貿易合意」に調印。電力貿易、国境をまたぐ送電線の整備、系統接続を進めている。
長期の契約だけでなく、雨期の電力余剰時でのインド向けスポット売電も始めた。民間も電力取引市場づくりに意欲的だ。経常収支赤字に悩む同国にとって、売電による収入は貴重だ。
中国も2019年の習近平国家主席の同国公式訪問後からネパールへの投資が目立ち、電力貿易にも関心を示している。中国との間で国境紛争を有するインドはそうした中国の動きに神経質になっている。その裏には、ネパールの印中両にらみの外交戦略もうかがえる。
写真)人民大会堂で握手を交わすネパールのプラディープ・ギャワリ外相と中国の王毅外相
出典)Photo by Mark Schiefelbein - Pool/Getty Images
ネパールの2020/2021会計年度(2020年7月16日~2021年7月15日)の電力消費のうち、ネパール電力公社(Nepal Electricity Authority、: NEA)の水力発電分が約2,811GWh(ギガワット時=10億ワット時)、インドからの買電分が2,826GWh、国内の独立系電力事業体(IPP)の水力発電分が3,241GWh。構成比は、前2者が31%台、IPP分が36%台となっている(NEAの同年度年次報告)。
NEA分は水害の影響で前年度より減少。インドからの買電は前年度比63%増と大幅に増えた。NEAの火力発電所は2か所だけで、9割以上は水力発電。ネパールの電化率は85%。
民間の水力発電増は目覚ましい。「今年度に入り、NEAがIPPと3,500MWの買電契約をし、契約待ちは7,000MWにのぼる」とIPP協会のK・P・アチャルヤ会長が明らかにしている(英字紙カトマンズ・ポスト2022年1月11日付電子版)。
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