香港つぶれた後、出現するか第二の金融都市
Japan In-depth / 2022年6月20日 19時0分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・香港政府トップの行政長官に7月1日から、警察出身で強硬派として知られ、習近平政権が唯一立候補を認めた李家超(ジョン・リー)氏が就任。
・李氏は民主派の弾圧に力を入れているため、自由都市・香港の復活は当分あり得ない。
・裕福な知識層や金融機関が香港を離れていく現在、どこがアジアの代表的金融都市として登場してくるのか、大きな注目点に。
香港政府トップの行政長官に7月1日から、警察出身で強硬派として知られる李家超(ジョン・リー)氏(64)が就任する。李氏は中国の習近平政権が唯一立候補を認めた人物で、警察出身者が行政長官に就任するのは1997年の香港返還後、初めてだった。
香港は中国政府の西側社会への“窓口”として自由な取引や生活、言論などがほぼ認められてきた特別な社会として存在し続けていた。
こうした中で李家超氏は習近平政権に忠誠を尽くす強硬派の警察幹部として名を揚げてきた。特に2019年の逃亡犯条例改正案に反対する市民デモを香港の保安局長として鎮圧に力を注ぎ有名になった。最大200万人が参加したといわれるデモに対し催涙弾などを使い若者を徹底的に取り締まったのだ。また20年6月に「香港国家安全維持法(国安法)」が施行されると民主派の弾圧に力を入れ、中国共産党に批判的だった香港紙の「蘋果日報(リンゴ日報)」創業者を逮捕して同紙を廃刊に追い込んだり、香港議会選挙を前にした予備選挙で、民主派元議員ら53人を政権転覆の容疑で逮捕した。
これらの指導ぶりをみた習近平政権は、香港の行政長官選挙でナンバー2だった李氏を唯一の立候補者として認め、支持した。選挙管理委員会によると、投票率は97.4%で、中国政府は李氏への投票で結束するよう指示したため、民主派だけでなく親中派の候補者も出馬を見送らざるを得なくなったという。選挙は香港市民の投票ではなく選挙委員に選ばれた人々による投票となっていたため、支持は1416票、不支持は8票で李氏の圧勝だった。
当選した李氏は「国家安全条例」の制度を急ぎ民主派などへの取り締まりを強化することを示唆している。このため主要7ヵ国(G7)の外相は「政治的な多様性や自由を傷つける選挙プロセスに重大な懸念を表明する」との共同声明を発表し、香港の自治と市民の権利を侵していると非難した。
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