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福島県の医師不足は改善されたのか その3

Japan In-depth / 2022年6月27日 18時0分

問題は、入院患者の診療の占めるウェイトが高い内科、外科、小児科、産婦人科などの診療科だ。このような診療科の医師数は、県北医療圏と比較して78.6%、51.5%、30.8%、33.0%しかいない。


これでは日常診療が回るはずがない。いわき市の医療は既に崩壊している。同市の中核医療機関であるいわき市医療センターのHPによれば、腎臓・膠原病内科、糖尿病・内分泌内科、呼吸器内科、リハビリテーション科に常勤医はおらず、腎臓・膠原病科のホームページには「常勤医不在のため、再来患者さんのみを対象に診療しています。」と記されている。このような診療科以外にも、眼科、放射線治療科、精神科、病理診断センターも常勤医は一人で、十分な診療が提供できているとは言いがたい。


常磐病院に勤務する外科医である尾﨑章彦医師は、「いわき市内で入院できない場合、救急車で郡山市内の病院まで運ぶのは日常茶飯事です」という。その距離は約80キロで、高速道路を用いても、1時間半を要する。


どうすれば、いいのだろうか。地元紙である福島民報は5月13日に「いわきの医師不足 実効性ある解決策必要」という「論説」を掲載誌、「いわき市、市医師会、市病院協議会の三者は市内の医療発展に向けた協定を結んだ。内田広之市長は「医師確保を加速させる」とするが、医師不足は大都市を除き、全国共通の課題だ。関係機関が連携し、居住環境など医師らに選ばれる地域づくりを目指すとともに、実効性のある施策を打ち出し、地域医療の充実につなげる必要がある」と論じた。


認識が甘いと言わざるを得ない。いわき市の医師不足は、「全国共通の課題」などのレベルではない。いわき市は人口32万6,943人(6月1日現在)の東北地方第二位の大都市だ。「いわき市、市医師会、市病院協議会」が協定を結んだくらいでは解決しない。福島県内の医師数が不足している以上、福島県立医科大学からの派遣を増やすにも限界がある。


いわきでの医師養成数を増員する、国立大学医学部を移転するなど、もっと強力な対策が必要だ。復興庁は浜通りに福島国際研究教育機構を設立するという。その中核事業には、ロボット、エネルギー、放射線科学・創薬医療・放射線の産業利用が含まれる。この話を聞いて、開いた口が塞がらない。


浜通りは戊辰の役以降の不幸な歴史もあり、元から医師不足だった。その状況が、東日本大震災・福島第一原発事故で一気に悪化した。いまや、日常診療もままならない状況だ。医療体制の整備は、住民の最優先希望の一つだ。地元の意向を省みず、「福島国際研究教育機構」を設置するのは正気の沙汰ではない。福島の復興は、住民目線に立ち、もっと真面目にやるべきである。


トップ写真:公立大学法人 福島県立医科大学 ⓒ福島県立医科大学医学部生化学講座


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