習主席による「反習派」への巻き返しか
Japan In-depth / 2022年6月28日 11時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・一連の政治的流れは「ゼロコロナ政策」継続派(習近平派)より「経済立て直し」派(李克強首相)派に傾きつつある。
・しかし、習主席は、再び「反腐敗」運動を展開し、「反習派」への巻き返しを試みようとしている。
・習主席の側近だった王小洪が、順当に公安部長(警察庁長官に相当)に就任。一方、李首相の「弟分」は左遷。
周知の如く、現在、中国共産党内では、「経済立て直し」派(李克強首相)と「ゼロコロナ政策」継続派(習近平主席)がせめぎ合っている。
だが、一連の政治的な流れは、前者に傾きつつある。そのため、習主席による「反習派」への“反撃”は困難かと思われた。
ところが、必ずしもそうとは言い切れない事態が生じた。
まず、習主席は、再び「反腐敗」運動を展開し、「反習派」への巻き返しを試みようとしている(a)。
次に、以下のような“事件”が起きた。中国共産党の重要な“舌・喉”である新華社は、その『半月談』(1980年創刊。原則、毎月10日と25日に発行)で、「経済安定の基盤はまだ強固ではなく、最後まで包括的な政策を実施すべきである」(b)という最新のシグナルを発信した(この論考では、習主席の「ゼロコロナ」政策については一言も触れていない)。
今年2月、中国でオミクロン株の変種が流行した後、習主席が上海をはじめとする多くの都市での過酷な「ゼロコロナ政策」を要求した。
3月以降、オミクロン変異株蔓延の噂が多くの一級都市(上海や北京等)で広まり、生産、投資、消費のあらゆる面で影響を与え、経済の下押し圧力を強めた。そこで、中国の「年間成長率(GDP)目標5.5%の達成」が難しい状況に陥っている。
経済状況が厳しくなる中、共産党内では不満が募り、4月には「経済再建策」が採用されたという。結局、習主席は経済担当者の李首相に「火消し」を依頼せざるを得なかったと分析する人もいる。
けれども、6月8日、四川省を訪問中の習主席が「揺らぐことなく断固として『ゼロコロナ政策』を実行せよ」と再び指示を出した。そのため、地方は混乱状態に陥ったのである。厳しい「ゼロコロナ政策」を実行すれば、確実に経済は回らなくなるだろう。
写真)中国・上海の地下鉄駅で消毒する防護服を着たスタッフ(2022年6月25日)。
出典)Photo by Hugo Hu/Getty Images
一部のアナリストによると、習主席は「ゼロコロナ政策」を、自己の組織的な強靭さと個人の業績を示すための道具として利用しているという。そして、李首相の「経済優先政策」に「負けるわけにはいかない」のである。
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