インフレが来た 現在のインフレは本当に一時的か?
Japan In-depth / 2022年6月28日 18時0分
特に、企業が中期の経営計画を立てる3~5年程度の期間の金利が、現状、国債の流通利回りでみて0%前後となっているのが、そのままで良いかということがある。足元のインフレもあって3~5年の予想インフレ率も上昇しているはずだ。そうなると、その期間の国債利回りでみた実質金利はマイナスとなる。
企業は、国債金利と同じ金利で資金を調達することはできないが、実質のリターンがマイナスの投資案件に積極的になるはずはない。それでも低金利に促され、リターンの低い投資プロジェクトに手を出すことはあるだろうが、そうした低リターンの投資の拡大は、結局、日本の経済成長率を押し下げることになる。実際、これまでいくら金融緩和を強化しても、期待したような成長率の底上げは実現されてこなかった。
こうしたことを考え合わせると、現在のインフレ期待の下でイールドカーブ(利回り曲線)を実質金利が変わらない範囲で全体として少し上方にシフトさせることにも合理性があるのではないだろうか。ごく短い期間のマイナス金利にも、円高による物価下押し圧力への対応という側面があったはずだ。足元の円安の進行が速すぎて、様々な経済活動がそれに十分追い付いていけないのであれば、なおさらそうした対応にも意味が出てくる。
将来また円高になって困るようなことになったら、実質金利が安定する範囲で再びイールドカーブを下方にシフトさせれば良い。本当に重要なのは、望ましい物価の上昇であり、それは半年程度で実現できるものではない。中長期的にみて、企業がリスクをとってより高いリターンを生むプロジェクトに前向きに投資できるような金融環境を維持していくことこそが、日本経済の実力を高めるのではないか。
トップ写真)日銀・黒田東彦総裁
出典)Photo by Yamaguchi Haruyoshi/Corbis via Getty Images
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