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死せる安倍氏、有権者を走らす 弔い合戦大勝、過去には敗退したことも

Japan In-depth / 2022年7月12日 23時0分

 


■ 総選挙演説の最中に刺殺、党は大勝


浅沼稲次郎という名を年配の人なら覚えているだろう。


日本社会党(社民党の前身)委員長として、1660年の日米安全保障条約改定反対運動を指導した。


この年の10月、当時の池田勇人内閣が衆院を解散する直前、東京・日比谷公会堂で演説のさ中、多くの聴衆の目の前で刺殺された。犯人は17歳の右翼の少年だった。


事件の約1か月後に行われた総選挙では、社会党は劣勢といわれた下馬評を跳ね返して23議席増、同党から分派した民主社会党は、ちょうどその数だけ議席を失った。自民党は13議席増だった。



写真)浅沼稲次郎


出典)Photo by FPG/Hulton Archive/Getty Images


社会党への同情票が増した理由のひとつは、池田勇人首相による浅沼氏への哀惜のこもった追悼演説だったといわれる。


「沼(浅沼氏のこと=筆者注)は演説百姓よ。汚れた服にぼろカバン。今日は本所の公会堂、明日は京都の辻の寺」ー。


常に大衆に語りかける浅沼氏の飾らない人柄、政治姿勢を読んだ昔の同僚の詩。これを朗読して議場をシーンとさせたことが、国民の浅沼を惜しむ感情につながった。


■ 家族が身代わり、敗れたケースも


弔い合戦が敗戦に終わった例としては2007年の長崎市長選がある。


4選を目指す現職の伊藤一長氏が遊説を終えて選挙事務所に戻ったところ、暴力団員の男に拳銃で射殺された。安倍氏殺害と似通った事件だった。候補者を失った伊藤陣営は、補充候補として急遽、娘婿を出馬させたが、健闘およばなかった。


このとき、「市長職は特定の家族のものではない」と訴えて当選したのは現在の田上富久市長だ。


 


■ 元蔵相は暗殺、党は大幅議席減


さかのぼること戦前。1932年2月の総選挙中、日銀総裁、蔵相などをつとめた著名な財政家、井上準之助氏が、応援演説会場の東京・本郷の小学校で右翼団体「血盟団」の青年に拳銃で撃たれ死亡した。


政友会、民政党2大政党が激しく対立する時代。井上氏は政友会系ながら民政党の浜口雄幸内閣(浜口首相も前年に暗殺)の蔵相として、金輸出を解禁して緊縮財政を断行、軍事費を削減したことなどが恨みをかった。


この時井上氏が支援した民政党は勝利はおぼつかず、選挙前から100議席も減らす惨敗、与党政友会が30議席上積みした。


こうした劇的なケースばかりではなく、候補者が選挙中に病死し、やはり〝身代わり〟が出馬したケースでも、勝利、敗北の結果が半ばする。


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