スリランカが「破産国家」に、インド太平洋戦略下で日本は支援強化する時
Japan In-depth / 2022年7月14日 7時0分
中村悦二(フリージャーナリスト)
【まとめ】
・実質的に破産国家に陥ったスリランカ。デモ隊が大統領や首相公邸を襲撃。両氏が辞意を表明し、総選挙へ。
・IMFからの救済措置取り付けまでのつなぎ融資として30-40億ドルの手当てが必要。インドが支援を表明。
・日本は支援表明しているが、自由で開かれたインド太平洋戦略下での協力を強化する時だ。
国際通貨基金(IMF)から実質的に破産国家と見なされるほどの経済危機に陥っているスリランカ。
ゴダバヤ・ラージャパクサ大統領、IMFからの救済措置取り付けを目指したラニル・ウィクラマシンハ首相の辞職を求めるデモ隊が大統領公邸、首相公邸を襲い、首相の私邸には火を放った。
同大統領は「7月13日に辞任する」と表明。ウィクラマシンハ首相も辞意を示した。1院制の国会の議長で首相代行となったマヒンダ・ヤパ・アベイワルデナ氏は、議員の所属する15政党に呼びかけ代表者会議を7月11日に開催。憲法の規定の従い、7月20日に大統領代行を決め、その後に総選挙を行うとした。
▲写真 ゴダバヤ・ラージャパクサ大統領(2021年11月) 出典:Photo by Andy Buchanan - Pool/Getty Images
ウィクラマシンハ氏は大統領就任に意欲を示しているともされ、その宿敵と見られる統一国民党(SJB)党首のサジット・プレマダーサ氏の父は首相、大統領と上り詰めた「稀代の寝業師」といわれた人物。スリランカ情勢は当分落ち着きそうにない。
▲写真 ラニル・ウィクラマシンハ首相(2018年) 出典:Photo by Paula Bronstein/Getty Images
ラージャパクサ兄弟は、中国の「一帯一路」戦略下の甘言に惑わされ、不必要なインフラ投資を行った。その代表例が、兄弟の地元ハンバントタでの国際空港、港湾建設。中国からの借金35億ドルの債務返済の再編を申し入れたというものの、ハンバントタ港の運営権を99年リースで譲り渡さざるを得なくなった。
▲写真 ハンバントタの展望台に掲示された港湾開発計画完成図(2018年)。債務不履行となり、港の運営権を中国に99年間リースで渡すことになった 出典:Photo by Paula Bronstein/Getty Images
スリランカは、新型コロナ感染拡大による観光収入減・海外出稼ぎ労働者からの送金減に直面し、燃料、食料、肥料、医薬品を輸入するのもままならない外貨不足に見舞われた。観光は人口の13%強、約300万人が従事する重要産業だ。電力不足にも陥った。
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