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「中東=灼熱の砂漠」ではない異文化への偏見を廃す その2

Japan In-depth / 2022年7月20日 23時0分

 ただ、当たり前のことを言うようだが、それが中東の全てではない。


 日本の外務省が「中東」と定義する範囲には、21の国と地域が含まれ、これにスーダンを加えた総面積は、およそ1400万平方キロメートル。日本の40倍にもなる。ちなみに総人口は5億1000万ほどで、英国が離脱する前のEUと同じくらいだ。


 アフガニスタンのカーブル(日本では〈カブール〉と表記されることが多いが、こちらが原音に近いようだ)は東経69度、モロッコのマラケシュは西経8度。東半球と西半球にまたがり、両都市間の距離は7000キロメートルを超す。日本列島も南北に長く、地域によって気候風土の差が大きいが、それでも北海道から沖縄まで3000キロメートルあるかないか、ということを考えてみるとよい。


 南北の広がりも然りで、トルコのイスタンブールは北緯41度で津軽半島とほぼ同じ。一方、イエメンのアデンは北緯12度でマニラやバンコクよりもさらに南に位置する。


 地形も高低差に富んでいて、地平線まで砂漠が続く風景ばかりではない。アフガニスタンには標高7500メートルに近い山があり、トルコやシリアにも5000メートル級の山岳が存在する。逆に最も標高が低いのは有名な死海で、なんと標高マイナス200メートル以下だ。


 砂漠の話題に戻して、中東の気候区分は乾燥帯、温帯、亜熱帯に分かれるが、北アフリカの内陸部とアラビア半島のほとんどは乾燥帯に属する砂漠気候である。昔から、アラビア語で「アル・ラバル・カーリ=空白地域」と呼ばれ、ヨーロッパの人々も「荒涼たるアラビア」などと呼んでいた。一方、同じアラビア半島でもイエメンからオマーン南部にかけては「幸福なアラビア」と呼ばれる。夏にインド洋から季節風が吹き付ける関係で降水量が多く、緑豊かなのである。


 さらに言えば、トルコ南部よりイラク北部を経てカスピ海に至る地域は温帯に属する地中海性気候で農耕に適しているし、イラク中部にはチグリス川とユーフラテス川に挟まれた広大な堆積平野が存在し、世界四大文明のひとつであるメソポタミア文明が栄えた。


 ただ、四大文明(メソポタミア文明、インダス文明、中華文明、エジプト文明)というのは日本独自の定義であるらしく、ヨーロッパでは単に「文明の黎明期」と呼ばれ、他にいくつかの古代文明が数えられている。


 ともあれメソポタミア文明だが、その全盛期を支えたとされるシュメール人については、今もって人種的特徴など、詳しいことが分かっていない。


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