1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

ブレグジットの評価が必要

Japan In-depth / 2022年7月22日 11時0分

ブレグジットの評価が必要


村上直久(時事総研客員研究員、学術博士/東京外国語大学)





【まとめ】


・ジョンソン英首相の最大の遺産はブレグジットを実現したことであり、ブレグジット派が求めたのは「主権の回復」だった。


・ブレグジットには良い影響、悪い影響がある為、単純に成功だった、失敗だったとは決めることはできない。


・ジョンソン氏後継者は就任後早い時期に、独立の調査委員会を立ち上げ、ブレグジットの調査報告を命じるべき。


 


◎ジョンソン氏の遺産はEU離脱


 与党保守党内の不祥事への対応における「不誠実さ」などへの党内批判に直面して辞意を表明したジョンソン英首相の最大の遺産は英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を実現したことだろう。2020年1月末に難航の末実現したブレグジットのバランスシートはどうなっているのだろうか。英国、特に経済にとってプラスだったのだろうか、それともEU残留が懸念したように英経済の足を引っ張っているのだろうか。


 


◇ブレグジットの影響


 ジョンソン氏が事実上率いた英国のブレグジット派が求めたのは「主権の回復」でであり、具体的には移民の流入に対するコントロールの強化や経済分野などでの一部のEU規制からの自由だった。


 英国とEUの間で4年間の厳しい交渉の末実現したブレグジットは現在、どのように機能しているだろうか。ブレグジットの結果は「まだら(mixed)だ」と言うのが、米紙ニューヨーク・タイムズの経済コラムニスト、ピーター・コイ氏だ。


 同氏によると、ブレグジットは英経済にとって明らかに否定的な作用を及ぼしたが、残留派の一部が恐れていたほどではなかった。


 また、EUとのゼロ貿易関税についての合意や非EU諸国からの移民に対する寛大な規則など、(残留派を)勇気付けるいくつかの材料もあった。


 EU残留派の主張は、ブレグジットが英経済への信認を損なうことによって、同経済を傷つけるだろうというものだった。実際、どうだったのだろうか。英通貨ポンドの為替相場は下落したものの、一方、市場金利は上昇し、株価や住宅価格は下落しなかった。さらに労働市場は堅調で、失業率はわずかに下がった。


 食料品価格はブレグジットから二年間の間にブレグジットがなかったと仮定した場合に比べて6%上昇したと試算されている。これはブレグジットによって食料品価格は下落するとの離脱派の見立てとは異なる。


 英国の銀行システムにあった資産の10%は国外に移されたが、英国から海外への働き口の流出は1桁台にとどまったとされる。


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください