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安倍晋三氏を悼む

Japan In-depth / 2022年7月25日 13時1分

 


ニューヨーク・タイムズはそのころ戦時中の慰安婦問題でもいまの日本政府を一方的に悪とするキャンペーンを展開していた。社説や一般記事でも安倍晋三氏が日本の戦後レジームを変えようとする動きをあたかも戦前の軍国主義への復帰のように非難していた。


 


 だが私に寄稿を依頼してきた同紙の寄稿ページの編集長にいろいろ聞いてみると、安倍氏をこれまで非難し、批判する一方だったと認め、その結果、生じた不均衡を埋めるために、安倍氏の実像をよく知っている側の意見を載せたいのだ、という趣旨の答えが返ってきた。


 


 その結果、私が書いた一文は安倍首相の就任後まもない2006年9月30日のニューヨーク・タイムズの寄稿ページにトップ記事という形で大きく掲載された。「だれがシンゾー・アベを恐れるのか(Who’s Afraid of Shinzo Abe?)」という見出しとなった。


 


 私はその記事のなかで安倍氏がそもそも戦後の民主主義の土壌で育ち、アメリカの民主主義にも共鳴して、日米同盟の堅持を唱えてきた経緯を説明した。歴史問題での安倍氏の主張は反日勢力の誹謗への事実に立脚する反論なのだとも説いた。さらに安倍氏の「戦後の総決算」的な主張は日本を普通の独立国家にするためのごく平均的な主張なのだと強調した。


 


 この記事はアメリカ側でもかなり広範に読まれ、引用された。そしてなによりも安倍氏のそれ以後の言動はまさに民主主義を信奉してのアメリカとの協調路線を進み、歴史問題では真実をためらわずに主張する、という軌道をまっすぐに歩んだといえる。



写真)自民党総裁に選出された菅義偉氏に花を渡す安倍晋三氏 2020年9月14日 東京


出典)Photo by Eugene Hoshiko - Pool/Getty Images


安倍氏がこの2006年の第一次政権では短命な統治に終わったものの2012年にはまた総理大臣となり、2020年まで記録破りの長期の政権担当となった。この間にアメリカをはじめとする安倍氏への国際的な評価が上昇の一途をたどったのは周知のとおりである。


 


 とくに同盟相手のアメリカでは民間の学界もメディアも、政界も官界も、安倍氏を軍国主義者だなどとみなす向きは皆無となってしまった。逆に民主主義の国際的な旗手として声援や賞賛を浴びせる対象となった。この大きな変化はまさに安倍氏自身の体現した民主主義の価値観、そして祖国の日本への愛、不正や専制に対抗する毅然とした挙措こそが勝ち取った実績だったといえる。


 


 思えば近年の日本は安倍晋三氏の貢献で民主主義を成熟させ、主権国家としての主権を確立し、日本のよき伝統や文化を復活させ、国際的な存在感をも強めた、と実感する。この点ではつい、「ありがとう、安倍晋三さん!」と語りかけたくなってしまう。


 


 ◎この記事は日本戦略研究フォーラムへの古森義久氏の寄稿論文の転載です。


トップ画像)安倍晋三元首相の葬儀が行われた増上寺を去る車。2022年7月12日 東京・港区


出典)Photo by Yuichi Yamazaki/Getty Images


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