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知られざるゾロアスター教  異文化への偏見を廃す その4

Japan In-depth / 2022年7月25日 18時0分

 いずれにせよ、当初は古イラン多神教の神官や信者から迫害を受けていたゾロアスターの教団だが、次第に勢力を伸ばし、3世紀のササン朝ペルシャにおいては国教の地位を確立するまでになった。さらにはペルシャ商人によって中央アジアから中国にまで伝わっている。


 光明と知恵の象徴として火を尊ぶことから「拝火教」とも呼ばれているが、本当のところは光明神であるマズダーと暗黒神アーリマンの戦いが続くという善悪二元論を宗旨の基礎としている。


「世界最古の一神教」とも称されるが、若林博士によれば、


「本当は違う、と否定する根拠もありませんが、紀元前の民俗宗教についてはよく分かっていませんので、鵜呑みにするべきでもないでしょうね」ということになる。


 ただ、善と悪との戦いが続くが、最後の審判では善が勝つ、という信仰が、ユダヤ教やキリスト教に影響を与えたことは間違いなく、そこからさらにイスラムが影響を受けた、という図式は成立する。


 とは言うものの、ササン朝ペルシャという巨大政治権力を背景にしたがために、ギリシャなど西方の人たちからは、東方の特異な宗派だ、という色眼鏡で見られたことも、また事実である。一例を挙げれば、マギと呼ばれる神官が行う拝火の儀式が、不可思議な呪術と誤解されて、マジックの語源になった、というように。


 そして7世紀にイスラムが勃興し、ササン朝ペルシャがその軍門に降ると、ゾロアスター教も急速に力を失い、信者の多くは活動の拠点をインドに移した。


 イスラムによる迫害も絶無ではなかったが、基本的に彼らの支配は穏健なもので、人頭税さえ払えば信仰の自由までは侵されなかった。このことは、以前にも述べた通りである。


 


 もともとゾロアスター教が衰退した理由は、その閉鎖性にあると衆目が一致している。


 たとえば異教徒と結婚した女性は必ず棄教しなければならない一方、他の宗教からの改宗者を簡単には受け容れない。教義の点でも、近親相姦を罪悪視しないなど近代社会には受け容れられない一面があった。


 現在、信者数は世界中で15万人近くに過ぎないとも、下手をすると(信者の定義によっては)10万人を下回るとも言われている。インドでも、7万人いるかいないかだと聞く。


 そうではあるのだけれど、インドに移った信者たちが、かの国特有のカースト制度の中でも独自の地位を確立した上、影響力のある人材を輩出してきたことも、また事実である。


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