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知られざるゾロアスター教  異文化への偏見を廃す その4

Japan In-depth / 2022年7月25日 18時0分

 冒頭でマツダについて述べたが、有名なタタ財閥の創業者もゾロアスター教徒の家系である。中核企業であるタタ・モーターズは、2008年に10万ルピー(当時の邦貨で約28万円)という、世界最安値の4ドア車を発売し、話題となった。同じく2008年には、米フォード社の傘下にあった英国のジャガーとランドローバーのブランドを買収している。マツダの関係者には申し訳ない言い方ながら、経営規模は比較にならない。


 ゾロアスター教との関わりで言えば、インドの厳しいカースト制度や、汚職の多いかの国の企業風土と無縁で、実力主義を貫いており、また利益の多くを社会福祉に還元している。日本企業がインド進出を図る際、タタ財閥を提携先に選ぶことが多かったのは、根拠のアル話なのだ。


 しかし一方、前述のようなグローバルな企業活動を、ゾロアスター教徒の家系だけで牽引できるはずもなく、2010年に先代のラタン・タタ会長(創業者のひ孫)が70歳を迎えた際には、


「我が社は〈ゾロアスター企業〉ではない」


 と宣言し、外国人の登用も視野に入れている、と発表した。実際にこの時、タタ・モーターズの経営責任者として、あのカルロス・ゴーン被告(逃亡中)の名も取り沙汰されたと聞く。


 


 英国の伝説的なバンドで、かつて『ウォールストリート・ジャーナル』紙が特集した「史上もっとも人気を博したロックバンド」でベスト100の3位(1位ビートルズ、2位レッド・ツェッペリン)に入ったこともある、クイーンのヴォーカルだったフレディ・マーキュリーも、ペルシャ系インド人でゾロアスター教徒の両親を持つ。



写真)クイーンのフレディ・マーキュリー(1982年)


出典)Photo by Steve Jennings/WireImage


 生来の名はファールーク・バルサラで、よく知られる通り1991年にエイズで他界した。


 その半生は『ボヘミアン・ラプソティ』(2018年)という映画によく描かれているが、終幕のクレジットによれば、遺体はゾロアスター教の習慣に従って火葬されたという。


 


 本当は、ゾロアスター教の伝統的な葬儀は「鳥葬」で、読んで字のごとくハゲワシなどに遺体を食べさせてしまうものだ。


 教義によれば死者の体には悪魔が住み着いているので、それを焼くのは「火を冒涜する」行為になるのだとか。


 


 ただ、主たる活動拠点がインドに移ってからは、乾燥したイラン高原と違って遺体がすぐに腐敗してしまうので、衛生上の問題が起きやすい、という事情があり、土葬や火葬をあまりタブー視しなくなったようだ。鳥葬の伝統も残ってはいるが、高い塀で囲まれた特別な施設の中でのみ行われる。


 いずれにせよ、20世紀のロンドンで鳥葬など、法も世間も許すはずがない、ということだったのだろう。


 世界規模で見れば小規模な宗教だが、その影響力は現代にも及んでいるのである。


 


トップ写真:ゾロアスター教の火寺で行われたモベド(司祭)の昇格式。伝統的な白い服を着た司祭が中庭で輪になって手をつないでいる。(1996年2月)


出典:Photo by Kaveh Kazemi/Getty Images


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