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日銀金融政策へのマーケットの反応 なぜ批判的な声が出るのか? 

Japan In-depth / 2022年7月28日 14時0分

にも関わらず、国債の利回り曲線(イールドカーブ)を動かさないために市場介入を強化する日銀の金融調節に対して、金融市場からは批判が寄せられる。輸入品の価格上昇を速やかに自社の製品・サービスの価格に転嫁できない産業界からも、輸入価格の上昇に対する円安の寄与がさほど大きくないにも関わらず、日銀は政策スタンスを見直した方が良いといったコメントが聞かれる。こうした批判、不満の源泉はどこにあるのだろうか。


 


■ そもそも金融政策ができること


そもそも、金融政策は景気を平準化しようとするもので、潜在成長率の上昇は、それが実現し景気の山谷が大きくない安定的な経済環境の中で達成されるというのが理論的な整理だったのではないか。もちろん、潜在成長率を引き上げるため、できるだけ緩和的な金融環境をできるだけ長く維持するという主張も、確かに正しいように聞こえる。しかしそういうやり方は、企業の姿勢が前向きで、リスクをとって自らが挑むビジネスを新しい環境にフィットしたものに変えていこうというものでないと十分効果が出ない。企業が全体として守りの姿勢にある時、超金融緩和の長期化は、長くは通用しないビジネスモデルの延命になりかねない。さらに、そうした金融緩和の継続自体が、企業の挑戦意欲をさらに弱めることにもなりかねない。


1951年10月に始まる景気の上昇局面から、2020年5月に終わる景気の下降局面まで、景気の谷から谷の一循環は全部で15回あった。一循環当たり55か月、4.6年という計算になる。平成に入った後については、これが少し長くなる。1993年以降は、全部で5循環、平均64カ月、5.3年だ。現在の日銀の異次元緩和は、そうした時間の長さを上回って強化され、持続されてきた。


景気循環が経済を鍛える面があることは、かねてより言われてきた。景気の後退があるから、ビジネスモデルがふるいにかけられ、より将来性のあるものが生き残っていく。しかし、その後退局面にあっても金融緩和が強化されたのでは、それは日本経済の弱いところに焦点を当てたマクロ的な護送船団政策になってしまう。現在、マーケットから日銀の金融政策に批判的な声が出ているのは、そういうことを直感しているからなのでないか。


このように考えると、潜在成長率が低下傾向にある中の金融政策であっても、マクロ経済の晴れの日、雨の日に合わせた強弱があっても良い気がしてくる。今の金融政策の枠組みに則して言えば、イールドカーブの一定の幅での振動を許すということだろうか。そういう振動は、利上げとか利下げとかいうこととはちょっと違う。そのような金融政策のイメージを考える際には、先月の当コラムでも述べたように、国債金利から推測される企業の資金調達コストを実質でマイナスするような金融緩和が日本経済の潜在成長率を高める上で望ましいのかという点が重要になるはずだ。


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