脱炭素で権威失墜 先進国の落日
Japan In-depth / 2022年7月28日 23時0分
ドイツに限ったことではないが、先進国はここ数年、脱炭素を理由として、開発途上国における化石燃料事業への投資・融資を断ち切ってきた。だがその一方で、自らはいま化石燃料の調達に奔走している。
そこにきて、アンゴラの貴重な電気を、ドイツでの水素エネルギー供給という贅沢のために使ってしまうという。だがその水力発電の電気は、貧しいアンゴラの経済開発のためにこそ使うべきものではないのか?
身勝手ということでは日本も類似のことをしている。
先日、外務省はバングラデシュとインドネシアに対する政府開発援助(ODA)による石炭火力発電事業支援の中止を発表した。CO2の排出が理由であり、G7の意向に沿った形だ。
だがその一方で、この夏の電力不足に対応するため、停止していた火力発電所の再稼働を急いでいる。千葉県の姉崎火力発電所5号機、愛知県の知多火力発電所5号機などだ。
自分の国で電力不足になりそうだと火力発電に頼る一方で、途上国の火力発電所は見捨ててしまう。日本がいま電力不足なのは事実だが、バングラデシュほど慢性的に電力が不足し停電が頻発し経済に甚大な悪影響を及ぼしている訳では無い。バングラデシュの経済開発のためには安定した電力供給が不可欠だ。
世界中に脱炭素を説教してきた先進国が、いざとなると経済のため、背に腹は代えられないといって世界中の化石燃料を買い付けている。途上国はもともと経済のために化石燃料を切望していたのに、その芽を摘んできたことには無頓着だ。そしていま先進国が化石燃料の高騰を引き起こして、国産エネルギーを持たない開発途上国は窮地に立たされている。
身勝手な行動は、先進国の権威を失墜させる。
いま先進国は、ウクライナへの軍事進攻をしたロシアを罰するためとして、経済制裁を進めている。だが、これには開発途上国はほとんど参加していない。
▲写真 ロシアからのガス供給削減を受けて、ガス需要削減計画を提案する欧州委員会委員長のフォンデアライエン氏 出典:Photo by Thierry Monasse/Getty Images
ドイツのショルツ首相は南アフリカを訪問し経済制裁に参加するよう要請したが、南アフリカのラマフォサ大統領はこれを断った。そして「傍観者や紛争の当事者でない国も、ロシアに課された制裁によって被害を受けている」と述べた。アフリカは、エネルギー価格の高騰のみならず、経済制裁に伴う食料価格の上昇でも大きな打撃を受けている。
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