毛主席の「紅衛兵」と習主席の「白衛兵」
Japan In-depth / 2022年7月30日 18時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・『中国瞭望』に記載された「毛沢東の紅衛兵、習近平の白衛兵」では、PCR検査が浸透する北京の日常生活の様子が語られた。
・コロナの蔓延が習主席の統制力強化に利用されている。
・一方、インターネット上では一党支配や個人崇拝に対する厳しい意見も少なくない。
最近、『中国瞭望』に「毛沢東の紅衛兵、習近平の白衛兵」(2022年7月24日付)というユニークな論考が掲載された。以下、一部抄訳したい。
北京市民の弁護士、梁小軍はFacebookに「今、北京の公共場所に入るには、48時間以内に実施されたPCR検査証明書が必要だ」として、彼の日常生活を紹介している。
現在、PCR検査をしなければ、出歩くことは困難である。子供達は家で勉強し、いつ学校が始まるかと、とっくの昔に期待しなくなった。だが、家長会(父兄会に相当)には毎日PCR検査がある。検査は朝7時からで、妻は6時前に下に降りて列に並ぶ。私は6時半に子供を起こし、下に連れて行き、検査をなるべく早く終え、家に帰って朝食をとる。その後、グループに報告し、パソコンをつけて授業の準備をする。PCR検査は静かに私たちの生活の中に浸透している。
梁は、今回のPCR検査で、皆が“飼い慣らされた”と指摘する。私達は、もはやPCR検査の必要性や科学的根拠について考えることもなく、ただ毎日機械的に列に並び、口を開けて「大白」(後述)に喉を突かせるだけだ。学校がそれを要求し、勤務先がそれを要求し、スーパーがそれを要求し、公園がそれを要求するからである。
PCR検査機関の検査が切り離せない存在になると、“制度化”されてしまう。そして、検査機関は、自らの利益のために、この飼い慣らしのシステムを強化する。
実際、コロナは中国共産党が人民を統制する最も優れた道具となった。梁のいう「大白」は、民間で“白鬼子”“白衛兵”“白ナチ”“白衣衛”“白無常”等と呼ばれている。コロナが流行し、人口2千万人の大都市がロックダウンすると、国家安全部や公安部政治安全保衛局ではなく、ボランティアという名の「大白」が登場した。
2年以上にわたってコロナが猛威を振るっている間、共産党の統治は弱体化するどころか、逆に、全体主義的統制を大幅に強化した。習近平主席は毛沢東主席のようにカリスマを持つ偉大な指導者ではない。毛主席の場合、多くの民衆が主席を死ぬほど愛し、紅衛兵が「毛バッジ」を胸につけた。だが習主席には、コロナが主席の最高の協力者として登場した。人々は習主席を恐れないが、コロナという“死神”を恐れる。死を恐れる人民は簡単に統治することができるだろう。
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