ミャンマー問題でASEAN方針見直し
Japan In-depth / 2022年8月1日 19時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・ASEANではミャンマー軍事政権に対して、さらなる圧力をかけるか、ASEANからの追放といった強硬手段に踏み切るべきとの議論が起きている。
・クーデターで民主政府を倒し、スー・チーさんらを即日拘束した直後から平和的解決の道を模索。
・議長声明としてASEANが提示した「5項目の合意」の呪縛。
東南アジア諸国連合(ASEAN)はミャンマー軍事政権が調停の動きに一切応じない頑なな態度を示していることから、これまでの和平の動きを促す調停という方針を見直し、さらなる圧力をかけるか、場合によってはASEANからの追放といった強硬手段に踏み切るべきとの議論が起きている。
こうしたミャンマーの軍政に対してASEAN内で最も強い態度で臨んでいるのがマレーシアで、サイフディン・アブドゥッラー・マレーシア外相は7月29日、インターネット上のSNSに「今日までミャンマー軍政はASEANの和平プロセスを無視し、暴力行為を続け、それは悪化の一途をたどっている。ASEAN各国は11月に開催予定の首脳会議では、重大な決断をしなければならなくなるだろう」と書き込んで、ASEANによるミャンマー問題の現状の扱いに深い落胆と同時に憤りを示した。
これは7月23日にミャンマー軍政が反軍政の立場から民主派の活動を続けた民主政府の国会議員だったピョ・ザヤル・ゾー氏(41歳)と著名な民主化運動の活動家チョウ・ミン・ユー(愛称コー・ジミー、63歳)氏ら4人に対する死刑を執行したことと無関係ではなく、ASEANの今年の議長国であるカンボジアのフンセン首相が死刑執行の中止を軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官に書簡で申し入れたにも関わらず無視されて執行が行われた。これはすでにASEANのミャンマー軍政に与える影響力が実質的になくなっていることを示している。
■ASEANの調停努力
ASEANは2021年2月1日の軍政によるクーデターでアウン・サン・スー・チーさんが率いる民主政府を倒し、スー・チーさんらを即日拘束した直後から平和的解決の道を模索し始めた。
欧米による非難と制裁とは一線を画したミャンマーも加盟する地域連合体としてなんとか解決の糸口を見つけようとしてきた。
ミャンマーやその後ろ盾である中国への配慮からミャンマー軍政に強硬に出られないカンボジア、ラオス、同じ軍政のタイに比べ、マレーシア、インドネシア、シンガポールなどは軍政を厳しく非難すると同時に調停での和平解決を進めた。
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