ペロシ米下院議長の訪台
Japan In-depth / 2022年8月4日 7時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・中国で第20回党大会を控える微妙な時期に、ペロシ米下院議長が訪台。
・習主席の第20回党大会再選を支持しないことを暗に示す動きとの見方も。
・ペロシ訪台は、米国が中国に投げた”クセ玉”だったのではないか。
今年(2022年)4月、ナンシー・ペロシ米下院議長(82歳。米大統領・副大統領に次ぐ米国のナンバー3)は、台湾を訪問する予定だった(現役議長としては25年ぶり)。しかし、コロナ再流行のため、ペロシ議長は訪台を断念したが、近頃、再びペロシ議長に、訪台の話が持ち上がった。
中国では、夏に北戴河会議、そして秋には、重要な第20回党大会が開催される。この微妙な時期に、議長は訪台を計画したのである。
本題に入る前に、中国での出来事に言及しておきたい。7月26日・27日、北京では習近平主席主宰の「第20回党大会を迎えるための特別セミナー」(ペン、紙、紙コップ、垂れ幕のない「4無」会議)が半年ぶりに開催(a)された
習主席は、自らの政権10年間の成果を「一里塚」とし、とりわけ2期目が「極めて異例で非凡」と自画自賛した(b)。そして、今後5年間は重要だと強調している。この演説は、次期任期のためのマニフェストと見る事ができよう。
翌28日夜、習主席はバイデン米大統領と電話会談を行った(c)。その中で、ペロシ議長のアジア歴訪、特に、訪台についても話し合われている。その際、習主席は大統領に「火遊びをすれば火傷する」と警告した。
ただ、両首脳とも台湾問題について、緊張感を高めるようなレトリックを避けた。これは、両国が国内の経済問題に苦しんでおり、台湾海峡の緊張に拍車をかけたくないという思惑があったからだろう。
時事評論家の秦鵬は、「習主席が先に退き、台湾問題については口を閉ざした」と指摘している(d)。また、習主席はバイデン大統領に「1つの中国」の原則を遵守するよう伝えたという。
一方、中国共産党の機関紙『人民日報』は、7月30日付第3面に、2本の論文を掲載した。一つは「米中関係を処理するためには、誤算を避けるようコミュニケーションを強化する必要がある」(e)だった。
米中は、両国民の基本的利益、世界の平和と安定、発展と繁栄を何よりも優先し、相互志向を堅持し、対話とコミュニケーションを維持し、互恵協力を強化し、相違を効果的に管理し、人為的に新しい矛盾と困難を作り出すことを避けよう、と主張した。
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