ペロシ訪台の陰で“敗北”した人民解放軍
Japan In-depth / 2022年8月8日 18時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・「台湾関係法」によって米国は台湾の防衛を支持するという厳粛な誓いを立てた。
・現時点で中国の戦闘機や空母などが臨時転用や機動展開の能力に欠けているので、米軍と対抗するのは難しい。
・ペロシ議長が台湾訪問後の実弾演習はあくまでも習政権が“面子”を保つための行動。
今年(2022年)8月2日、ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問した。ペロシ議長の訪台に関しては様々な議論がある。同2日付『ワシントン・ポスト』紙に、議長本人が自らの信念を吐露(a)しているので、一部紹介したい。
(「台湾関係法」によって)米国は台湾の防衛を支持するという厳粛な誓いを立てた。私達は、弾力性のある島、台湾の側に立たなければならない。台湾は現在、新型コロナのパンデミックに対処し、環境保全と気候変動を擁護するリーダーである。また、台湾は平和、安全保障、経済的ダイナミズムのリーダーであるし、台湾は、起業家精神、革新の文化、そして世界が羨む技術力を持っている。
以上のように、台湾を持ち上げた。けれども、周知の如く、ペロシ訪台は、中国側の反発を招く結果となった。
ここでは、軍事的観点から、その訪台を考えてみよう。最近、『中国瞭望』に掲載された沈舟の論考(b)が優れているので、大雑把に抄訳する。
今回、ペロシ訪台の際、米軍が護衛する動きを見せた。そこで、台湾海峡で、米中間に緊張状態が生じている。
7月28日、中国国防部報道官は、記者会見で(ペロシ訪台を)「絶対に容認せず、断固として反対する」などと話した。この発言を聞く限り、中国軍には十分な対応時間があったと思われる。極端な話、中国戦闘機が台湾海峡「中央線」を越えてペロシ機を迎撃することも、“理論上”可能だった。
8月2日、中国軍は主に第4.5世代戦闘機「J-16」(第4世代「J-15」の改良型)等21機を投入し台湾西南防空識別圏に進入したが、「中央線」を越えていない。ペロシ機は台北松山空港に着陸予定だったので、もし中国戦闘機が本当に同機を迎撃するつもりなら、あるいは、少なくとも接近するつもりなら、台湾東部の台北付近の空域か、台湾北部の空域に現れるはずだった。しかし、中国戦闘機は台湾の同空域を封鎖するような動きを見せていない。
実際、東部戦区の安徽省蕪湖市には、第5世代戦闘機「J-20」が駐留している。だが、台湾海峡方面への移動が間に合わなかったという。これは中国軍の同戦闘機が、臨時転用や機動展開の能力に欠けていることを反映しているのかもしれない。
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