ルーズベルト死去への貫太郎の哀悼に感動 「高岡発ニッポン再興」その25
Japan In-depth / 2022年8月9日 11時46分
小磯総理は4月5日退陣しました。この日の午後5時から重臣会議が開かれました。重臣4人は一致して、正式に鈴木を推戴したのです。
鈴木は改めて「軍人が、政治に関与してはいけない」という信念があるといって、断りましたが、昭和天皇は午後10時過ぎに、宮中御学問所に呼び出されました。昭和天皇は「鈴木の心境は、よく分かる。しかし、この重大なときに当たって、もうほかにひとはいない。頼むから承知してもらいない」とおっしゃったのです。
鈴木貫太郎は昭和天皇と話していた際には、きっと山本玄峰との会談のことも頭にあったに違いありません。結局引き受けるのです。
鈴木貫太郎内閣がスタートしました。
私が貫太郎の人間性を知るうえで、印象深いのは、総理就任直後の4月11日のエピソードです。アメリカのルーズベルト大統領が急死しました。ルーズベルトといえば、敵国の大将です。それなのに鈴木はこんな発言をするのです。
▲写真 ルーズベルト大統領(1936.01.01) 出典:Photo by Keystone Features/Getty Images
「今日の戦争において、アメリカが優勢であるのは、ルーズベルト大統領の指導力がきわめてすぐれているからです。その偉大な大統領を今日失ったのですから、アメリカ国民にとっては、非常な悲しみであり、痛手でしょう」。
鈴木の哀悼の言葉が通信社を通じて、全世界を駆け巡ったのです。人間として敵味方の次元を超えて、人の死を悲しんだ発言です。これに対し、敗北寸前だったドイツのヒトラー総統はルーズベルト大統領の死について、「愚かな大統領として、歴史に残るだろう」との声明を出しました。世界では、ナチス・ドイツと比較して鈴木貫太郎の言葉に感動が広がりました。
ドイツ人の作家で当時アメリカに亡命していたトーマス・マンは「ドイツ国民のみなさん、東洋の国日本にはなお騎士道精神があり、人間の死への深い敬意と品位が確固としてあるのです。鈴木総理の高い精神に比べ、あなたたちドイツ人は恥ずかしくないのですか」と訴えました。
しかし、貫太郎の弔電は、日本の陸軍からは批判の的です。青年将校らは激怒し、鈴木貫太郎に詰め寄りました。すると、鈴木は「古来より、日本精神の一つに、敵を愛す、ということがあります。私もその日本精神を則っただけです」と言い放ちました。
一方、就任直後は、終戦の決断を期待していた人たちからは、貫太郎の言動に落乱の声が上がりました。貫太郎はしばらく、徹底抗戦の構えを示していたからです。総理就任後、すぐには終戦を言い出さなかった点について、前回にも登場した作家の半藤一利さんはこんな見方を示しました。早急に終戦を言い出せば、陸軍がクーデターを起こし、終戦工作は一気に吹き飛ぶ恐れがあったというのです。
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