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中国への日米の対応の違い

Japan In-depth / 2022年8月10日 23時0分

アメリカの歴代政権で対中政策に関与してきたボニー・グレイザー氏が8月3日の米中経済安保調査委員会の議会公聴会でずばりと軍事を衝くこんな言葉をさらりと述べた。グレイザー氏は中国の軍事や戦略を長年、研究してきた著名な女性学者である。


グレイザー氏は「中国の政策の挑戦」と題する公聴会で証人として発言したのだった。この公聴会ではペロシ下院議長の台湾訪問を踏まえての議論が熱を高めた。私も朝から夕方まで傍聴したが、主題はやはり軍事となったのである。


同委員会のランディ・シュライバー議長(元国防次官補)の「台湾問題は中国が加工した『激怒』の背後でどんな軍事戦略を立てているかが最大焦点だ」という総括がその集大成だった。


日本では中国について官でも民でも、軍事の動向について、ここまで直接的に議論することは絶対といってほど、ない。


翌8月4日に民間の大手研究機関のヘリテージ財団が開いた「台湾の将来」と題する討論会もまず軍事だった。私もこの討論会に出かけて、じっくりとその展開を追った。


基調報告者のジャック・キーン陸軍大将が「今回の中国の台湾包囲の大軍事演習は中国が年来の台湾上陸作戦から海空での台湾封鎖へと基本戦略を変え始めた兆候だ」と指摘した。


歴代大統領の軍事顧問をも務めたキーン大将は「アメリカ軍部は一貫して中国が台湾を攻撃した場合の対中国戦争計画を保持してきた」と明言した。彼自身がその米中戦争の模擬演習である戦争ゲームに何度も参加してきた、とも述べた。








▲写真 台湾の装甲兵員輸送車が漢光演習の最中に海を渡る(2022年7月28日)出典:Photo by Annabelle Chih/Getty Images





実際に私も長いワシントン駐在の間に国防総省や国防大学での米中戦争のシミュレーション(模擬演習)について頻繁に聞かされてきた。数十人の専門家に米中双方の軍事関連当事者の役割を与え、数日間をかけ戦争遂行をさせ、その結果を検証する作業である。





米中関係を考えるうえでの最初の入り口、あるいは最大の要素は軍事であることを示す一例なのだ。中国は軍事力を使う意図がどこまであるのか。その中国の軍事力はアメリカの軍事力と衝突した場合、どうなるのか。こうした領域での思考が米中関係における軍事の要素という意味なのだ。





アメリカが最終的に中国との戦争に踏み切るか否かは大統領レベルの政治決定だとはいえ、アメリカ軍当局は常にその戦争遂行の計画を保持するという基本姿勢である。日本にとって想像を超える悪夢のような米中戦争という事態も実際にありうるとする構えなのだ。





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