10式戦車は生き残れない(上)
Japan In-depth / 2022年8月12日 19時0分
更に近年ではサイバー戦や中国の弾道弾に対する脅威が認識されており、これらでも戦車は必要ない。
ウクライナのような平原が多く、なおかつ陸上に国境がある国であれば、隣国ロシアの大規模な機甲部隊に備えるために機甲部隊の整備は必要不可欠だが、我が国は環境が違う。
防衛省、自衛隊は国産兵器を開発するときに、「我が国固有に環境と運用」に適した装備が必要というがそれを意識すれば10式は必要ない。
無論未来永劫機甲戦がないとは断言できない。であればその運用ノウハウ維持のために種火程度の機甲戦力を維持すれば良い。戦車は現在定数が300輌だがこれを100輌程度までに減らしていいだろう。
筆者は長年不要な戦車は減らして、その予算や人員を既存装甲輌の近代化やネットワーク、ドローンなどの新たな装備に投資すべきだ、それをやることによって機甲部隊の「現代化」も達成できると主張してきたが、ウクライナへのロシアの侵攻ではそれが証明されている。ロシアの多くの戦車がドローンによって探知、攻撃されて主砲を撃つ前に次々と撃破されている。
10式戦車は将来の戦場では生き残れない。また製造を続けても国防に寄与しない。戦後の日本の戦車は61式戦車以来、殆ど近代化が行われていない。これは90式も同じだ。
当然10式もそうなるだろう。事実10式は採用されて10年以上経つが、近代化の計画はない。仮に近代化を企画しても無理だろう。既存の10式を近代化する予算を陸幕は捻出できない。そして例によって10式戦車は冗長性を考えずに作られている。本体40トンを実現するために車体が無理なまでの小型化されて、内部ボリュームにも余裕がない。
10式のコンセプトは本来40トン、最大でも44トン、増加装甲と燃料弾薬を下ろせば、40トントレーラーで移動できる、だから通れる橋梁も多く、北海道以外で90式より多くの地域に進出できる、というものだ。これが売りだったし、他国がやっているように第3世代の90式を近代化せずに新型戦車を開発する大義名分になっていた。
だがご案内のように防衛大綱で敵の機甲部隊が大部隊で上陸してくる可能性は低いとしている。であれば、機甲戦を主体とした10式の開発、配備は必要なかったはずだ。
つまり、10式は重量が増加する近代化はできない、それができるのであれば、何でまだ使える90式の近代化で乗り切らなかったのか、と批判されることになる。
そもそも10式は現代の機甲戦闘で生存できない。装甲が厚いのは主に、砲塔と車体正面でだけであり、安普請で他国の3.5世代戦車よりも生存性が低い。これは冷戦期、あるいは昭和の戦車である90式と同じだ。
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