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10式戦車は生き残れない(上)

Japan In-depth / 2022年8月12日 19時0分

10式は開発時に財務省を説得するために90式より同等か、安くしないと認められないという事情があった。であれば高価な複合装甲を多用したり、生存性を上げるための装備を搭載することができなかった。それが外見からでもわかる端的な例が側面スカートです。ただの数ミリの鋼製で、90式と同じだ。現在のミサイルには無力だ。ウクライナで問題になった車体上方からのトップアタック攻撃に極めて脆弱だ。


他国の戦車は多く、機銃などの火器と光学・電子センサー、安定化装置、レーザー測距儀などを組み合わせたRWS(リモート・ウェポン・ステーション)を採用しているが10式は採用していない。人口の7割が都市部に住み、ゲリラ・コマンドウ対処では都市部での戦闘が想定される「我が国独自の環境と運用」を鑑みれば、敵の歩兵やドローンから戦車を守るRWSの装備は他国よりも、より必要なはずだが、導入されていない。それは重量と、調達単価が上がってしまうからだろう。



写真)10式は重量と単価で制約があった


出典)筆者提供


我が国の戦車は90式まで他国の戦車の3倍程度の単価だったがが、それが10式で旧に90式とほぼ同じ、他国の戦車より圧倒的に安くなるということ自体、いかがわしい話だと疑って然るべきだろう。


陸幕は慢性的に金欠で、調達後の戦車の生存にも無関心だ。90式の期限が切れた消化器の更新すらしないほどカネがない。それは実戦を想定していないからだ。新しい玩具を欲しがる子供と同じで、軍事のプロとしての思考ができない。


今回のロシアのウクライナ侵攻でも、戦車はドローンによって遥か遠くから探知され、自爆ドローンや誘導砲弾トップアタック、砲兵や迫撃砲の精密誘導砲弾などによって、主砲を撃つ前に多くが撃破されている。


そうであれば、増加装甲などによる、装甲強化、赤外線シグニチャーの低減、ドローンや敵の歩兵に対するRWS、敵に先んじて情報を取るためのドローンの装備、APS(積極防衛システム)の導入、歩兵とより緊密に連絡できる通信システムなどが必要だが。10式にはどれも不十分だし、陸幕は近代化をする気も、予算もない。


更に申せば、夏に気温40度にもなる「我が国固有の環境」にもかからず10式、既存の90式にはクーラーがない。クーラーは乗員の疲労を低減するだけでない。NBC(核・生物・化学兵器)環境化における活動を可能とするためにも必要不可欠だ。クーラーの導入、更に前記のようなシステムを動かすためにはエンジンの出力強化、あるいは補助動力装置の強化が必要だ。だがそれらを搭載する重量的な余裕も予算の余裕もない。


写真:第3世代の90式戦車


出典:筆者提供


(続く)


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