10式戦車は生き残れない(下)
Japan In-depth / 2022年8月12日 19時0分
さて将来の戦車はどうなるだろうか。新世代の戦車が登場したときに、10式は戦えるのだろうか。6月に開催されたユーロサトリでラインメタルとMW+ネクスター・システムズが次世代戦車のコンセプトモデルを発表した。これらは130ミリ及び140ミリ砲の搭載を検討されている。
筆者はこのような大口径砲の導入は難しいと考える。装弾数が現用の120ミリ砲の戦車の半分あるいはそれ以下となり、徹甲弾、榴弾などの複数の弾種を搭載した場合の運用の柔軟性が失われるからだ。弾数の多さも戦車の重要な要素です。特に都市戦で歩兵相手では尚更だ。幾ら砲の威力があっても弾がなければ戦車はただの鉄の棺桶だ。
かと言って、装弾数を増やせば戦闘重量が相当重たくなる。現在の3.5世代の戦車は概ね60~70トンと重く、運用上の限界と言われている。将来の冗長性を考えれば60トン以下には納めるのが現実的だ。
重量を考えれば、現在主流の2名搭乗する砲塔は難しい。重量を軽減するためには無人砲塔が選択されることになるのではないでしょうか。これで数トンは低減できるし、乗員の生存性も向上する。ロシアのアルマータはこの方式を採用している。
ただ乗員は増えるかもしれない。RWSやドローン、UGVその他システムを操作することを考えれば4名は必要だろう。現在はレオパルト2のように装填手がいる戦車は装填手が担当しているが、自動装填装置を備えた10式など3名が定員の戦車だとこれらの運用が難しい。このため自動装填装置を採用しても4名定員になる可能性がある。その乗員すべてが車体に収容されることになるだろう。
筆者は主砲の大口径化よりも現用の主砲の強化と、対戦車ミサイルや徘徊型ドローンなどの装備を組み合わせる方が現実的だと考える。
重量軽減を第一に考えれば無人戦車という選択もある。事実ユーロサトリで展示された戦車にもそのような構想がある。例えば戦車あるいは装甲車から複数の無人戦車を操作することも考えられるだろう。加えてウクライナでの戦訓が反映されるだろから、将来の戦車の姿は現状どうなるか分からない。恐らくは今の戦車と全く違ったものになるだろう。一番割を食うのは「遅れてきた3.5世代戦車」である10式だろう。
いずれにしても戦車には自爆ドローン含めたドローン、UGV対策、トップアタック対策は必要だ。そうなれば全周的な装甲の強化、ASP、RWS、ドローンの装備などが必要だ。だがご案内のように10式にはそのような近代化は想定されていない。しかも、車内容積に余裕がない。極端な軽量化、コンパクト化のために、乗員のスペースも少なく、砲手などは体を曲げて「お姉さん座り」をせざるを得ない。
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