台湾を巡る米中戦争は必至か?
Japan In-depth / 2022年8月17日 11時26分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・ハーバード大教授、米国が台湾をめぐり中国と局地戦を戦えば、米大統領は敗北するか、より広範な戦争にエスカレートするか、との選択に直面するとの論考発表。
・中国ネットメディア、この論考は中国軍の実力、中国経済の停滞を考慮に入れていないと批判。
・「中台統一」が達成できない場合、今度はこの感情が逆襲し、中国共産党政権に打撃を与えるだろうと予測。
今年(2022年)8月2日、ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問した。それが原因で、中国軍は台湾周辺で軍事演習を実施している。
ペロシ議長の訪台は、米民主党に近い主要メディアから鋭い批判にさらされた。しかし、米在住の中国研究者、何清漣は次のように指摘している(a)。
欧米メディアはペロシ訪台について、中国共産党を刺激し台湾に危機をもたらすので、ダメだと言っている。これは半分真実だが、もしペロシ議長が台湾を訪問しなければ、北京は台湾を放置するのだろうか。無論、そんなことはない。ただ、(台湾侵攻の)ペースが遅くなるだけである。このように何清漣は喝破した。
依然、台湾海峡が不安定な中、米議会議員5人が台湾を訪問(b)している。台湾政府関係者は民主党上院議員、エド・マーキー(マサチューセッツ州選出)率いる超党派代表団を歓迎した。そして、同関係者らは、北京との緊張が高まっている中での議員団訪台に感謝の意を示した。
今度の米議員団訪台は、米国が中国軍の出方を読み切っている(第20回党大会前、習近平政権は動かない)観がある。そうでなければ、北京を刺激するような、度重なる米議員団の訪台は考えにくい。
写真)インド太平洋地域を訪れた議会代表団と共に議会で会見するナンシー・ペロシ下院議長 2022年8月10日 米国・ワシントンDC
出典)Photo by Anna Moneymaker/Getty Images
さて、「ツキディデスの罠」で有名なハーバード大学教授、グレアム・アリソンが、8月5日付『ナショナル・インタレスト』に「台湾、ツキディデス、米中戦争」という論考(c)を発表した。
まず、アリソンの言う「ツキディデスの罠」とは、『デジタル大辞泉』によれば、「新興勢力が台頭し、既存勢力の不安が増大すると、しばしば戦争が起こる」という意味である。
アリソンは、次のように指摘した。
歴史という大きなキャンバスの中で、急浮上する権力が現勢力を脅かす場合、その競争は、たいてい戦争で終わる。過去500年の間に、このようなツキディデスの対立が16例あった。そのうち12件は戦争に発展している。
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