ドイツ戦後史とロシア系ドイツ人 戦争と歴史問題について その4
Japan In-depth / 2022年8月17日 23時0分
戦後史がまったく異なるのに、ドイツが頻繁に憲法を変えているからわが国も……というのでは、
「バスに乗り遅れてはならない」「西に欧州新秩序、東に大東亜共栄圏」
と言ってヒトラーの尻馬に乗った愚挙を本当に反省しているのか、という話ではないか。
今回のテーマである「戦争の記憶」についても、サンドラ・ヘフェリンさんに色々と質問したのだが、煎じ詰めると、
「日本のように、終戦を記念する式典が大々的に執り行われることはありませんが、毎年5月になると(ナチス・ドイツが降伏したのは1945年5月8日)、TVや雑誌が、アウシュビッツの記録とか、ユダヤ人問題を忘れてはいけない、という特集を組みますね」
ということであった。
移民労働者の排斥などを訴え、民族主義的な活動を続ける、ネオナチと呼ばれているグループでさえ、取材のマイクを向けられた時など、口を揃えて、
「俺たちはナチじゃない。今のドイツのために闘っているんだ」
と言う。旭日旗を掲げた街宣車が、大音量で軍歌を流しながら走り回れる国とは、やはり事情が異なるようである。
学校では戦争について、どのように教えるのかも聞いてみたが、ロシアと同様、小学校レベルでは日本風に言うと「読み書きそろばん」を教えるだけだが、彼女が通ったミュンヘンのギナジウムでは、歴史問題について「結構みっちり」教えられたそうだ。
余談ながらドイツの教育システムは俗に「三分岐方式」と呼ばれていて、6歳から学校教育を受けるのは日本と同じだが、初等教育は4年間で、おおむね10歳までの成績により、大学進学を目指すギナジウムか、全日制の職業学校への進学を前提としたレアルシューレ、職人を養成するハウプシュトーレに振り分けられる。就学年数は州によって異なり、また、最近はこうした区別のない、ゲザムシュトイーレと呼ばれる学校もある。
いずれにせよ、学校教育・社会教育の両面でナチス・ドイツの「負の歴史」を払拭しようとしているわけだが、日本の政界や言論界にしぶとく生き残っているような「歴史修正主義」の動きは見られないのだろうか。
とりわけロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ドイツは国防政策を転換し、予算も大幅に増額された。さかのぼれば20世紀の二度の大戦で、いずれもロシア・ソ連邦を敵として戦った、その歴史はどう受け取られているのか。
これまたサンドラ・ヘフェリンさんによると、
「まっとうなドイツ人であれば、ヒトラーは実は正しかった、なんて口が裂けても言いませんけど、プーチンのやったことがあまりにひどいので、少し風向きが変わってきたという感じは受けますね」
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