陰謀説の危険 その8 日本の反ユダヤ主義の解剖
Japan In-depth / 2022年8月18日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・「露ウクライナ侵略は米などのユダヤ勢力がバイデンやプーチンを操った結果」との言説が横行。
・日本の反ユダヤ主義について徹底検証した本「日本人の心の中のユダヤ人」がある。
・日本でかなりの同調者を得ているともいえるユダヤ陰謀説はアメリカなどではきわめて否定的な反応が圧倒的。
日本にユダヤ陰謀説が存在してきたことはまちがいないだろう。ユダヤ陰謀説とは「ユダヤ人が結束して、大国の政府や国際関係をひそかに動かしている」という種類の主張である。あるいは「ユダヤ人は秘密裡に世界を乗っ取ることを意図している」というような言説でもある。あえてこれを「陰謀説」と呼ぶのはその主張に証拠がないからである。
2022年の現代の日本でも「ロシアのウクライナ侵略は実はアメリカなどのユダヤ勢力が背後でバイデン大統領やプーチン大統領を操った結果なのだ」という言説が横行している。日本国の在外駐在の大使を務めたような人物によっても堂々と述べられているようだ。
この種の言説は日本では過去にも目立っていた。このユダヤ陰謀説はユダヤ人を危険視、敵視しているのだから反ユダヤ主義とも呼べるだろう。その日本の反ユダヤ主義について徹底検証した本がある。アメリカ人と日本人の学者とが共同の調査と研究を長年、重ねた結果の著書である。
この本は「日本人の心の中のユダヤ人(Jews in the Japanese Mind)」と題され、アメリカの大手出版社、ニューヨークの「フリープレス」社から1995年1月に刊行された。出版の時期は20数年前と、かなり古いが、現在にいたるまで日本の内部のユダヤに関する言説や態度をこの書ほど広範に、実証的に調査して、分析した集大成はまずみあたらない。約360ページの内容は日本の学界、言論界、出版界は反ユダヤの傾向に満ちているとし、その具体例を多数、あげていた。
同書の副題は「文化的に陳腐な定型の歴史とその利用」となっていた。著者はイリノイ大学のデービッド・グッドマン教授と同志社女子大の宮沢正典教授である。この2人の共同研究論文はこの「陰謀説の危険」の前回の「その7」で紹介した。この2人の共同研究の報告書がこの膨大な本へと発展したわけである。
日本の内部の反ユダヤ主義とそこから生まれるとみられるユダヤ陰謀説に国際的な光をあてるためにこの本の内容をもう少し紹介しよう。
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