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2%インフレ目標実現後の日本経済のイメージ

Japan In-depth / 2022年8月30日 13時21分

当面の実質労働生産性の伸びを年率1%とすると、それにインフレ率2%を加えた年率3%の賃金上昇があれば、労働分配率は低下しない。そうした状況が望ましいかどうかについては、色々と議論があるだろうが、ここでは「良い」2%インフレのイメージをつかむため、とりあえずはそう設定しよう。そうすると、現在日本銀行は、平均的に3%の賃金上昇が実現するまで「悪い」2%インフレ(今となっては2%超のインフレ)を享受し、粘り強く経済の刺激を続けていくと言っていることになる。


ところで、これは日本銀行の分析にもあるが、日本経済におけるインフレ期待は適合的に形成されている面が強く、したがって価格設定にそのインフレ期待が織り込まれるのに一定の時間がかかる。さらに、2%の「良い」インフレの経済が定常状態として広範に認識されなければ、その下で企業が積極的に設備や研究開発、人材の投資に踏み切ることも難しいだろう。


経済全体で3%の賃金上昇が実現し、現在よりもう少し低い2%インフレが続く状態で、私達はより元気に前向きに経済活動ができるだろうか。その下で、日本経済はこれまでより高い経済成長ができるだろうか。現在、そのイメージは広く共有されているだろうか。


このように、インフレ目標で本当に実現したい日本経済の活性化には一定の時間が必要のようだ。グローバル・スタンダードとして受け入れ、それが実現した時のイメージが必ずしも共有されていない2%のインフレ目標だけに、良い「2%」インフレに至る日本経済のこれから道筋が説得的に描けることが大事だ。


■ 現在のインフレは本当に一時的か


「良い」2%インフレの実現まで私達が待てるとすると、その重要な前提は現在の「悪い」インフレが一時的だということだ。もし、このインフレが予想以上に長引いて、さらに3%台にもなってしまえば、より多くの国民が今の「悪い」インフレの抑制を将来の「良い」2%インフレの実現以上に求めるかもしれない。


現在のインフレは確かに一時的な要因によってもたらされている面はあるが、経済のグローバル化の変質、日本も含めた先進国の人口動態によって構造的にもたらされている面もあるかもしれない。この点は丁寧な検証が必要だ。さらに、2%の「良い」インフレが実現するまで一定の時間がかかるとすれば、その間、これまで経験のないインフレに耐え、具体的なイメージが必ずしも共有されていないその向こう側の良い世界を待つことになる。それもなかなか大変そうだ。


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