安倍晋三氏を悼むアメリカ その1
Japan In-depth / 2022年9月18日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・安倍元総理の死の後、バイデン米大統領は安倍氏の業績を礼賛し、弔意を表明した。
・そうした安倍元総理の死を悼む米国の反応は日本とは対照的である。
・日本では安倍氏の政治遺産の評価やこの冷酷な殺人の理不尽さの糾弾よりも、旧統一教会の疑惑の動きに焦点が移っている。
安倍晋三氏の死をアメリカの首都ワシントンで改めて想うと、日本での反応の奇異を実感する。そしてアメリカ側の官民がなお安倍氏の政治的な業績を正面から総括し、その喪失を深く悼むという態度に安倍氏の国際的評価の高さを改めて痛感する。
安倍氏の悲劇へのアメリカの官民の反応はすでに広く知られてきた。
ワシントンでは現地時間の7月8日未明に安倍氏の死亡が確認されると、その朝すぐにホワイトハウスはその死を悼む声明を発表した。そして連邦政府機関や在外公館では弔意を表する半旗を3日間、掲げる指令を発した。自国の指導者の逝去の扱いと変わらないほどの丁重な対応だった。
続いてバイデン大統領が特別に記者会見を開き、「安倍氏は日米同盟を深化させ、自由で開かれたインド太平洋という日米共同の構想を促進した」とその業績を礼賛し、弔意を表明した。ほぼ同時にトランプ、オバマ、二代目ブッシュという歴代の大統領がそれぞれに安倍氏の死をアメリカや世界にとっての損失と位置づける追悼の意を表した。
アメリカ議会でも上院本会議に安倍氏の追悼の決議案が出され、全会一致で採択された。発案者の1人はかつて駐日大使を務めたビル・ハガティ上院議員だった。決議は安倍氏の民主主義の拡散と強化による世界への貢献、さらには北朝鮮による日本人拉致事件の解決への努力までを讃えていた。
私自身もアメリカの知人や友人から多数の追悼が寄せられたのに驚いた。長年、交信のない知人たちからも「安倍元首相の死を心から悼む」という趣旨の弔文が届いたのだ。アメリカ側でのこうした反響は日本とはあまりに対照的だった。
日本では安倍氏の政治遺産の評価やこの冷酷な殺人の理不尽さの糾弾よりも、旧統一教会の疑惑の動きに焦点が移り、この疑惑が安倍氏の殺害をあたかも正当化するような示唆さえが目立つ。いかなる「動機」も残忍な殺戮を許せるはずがない。その意味では安倍氏の悲劇と旧統一教会とはなんの関係もないといえよう。
私は安倍氏の殺害から2週間余の7月下旬に東京からワシントンに戻った。ワシントンは私の長年の報道活動の拠点である。そしてまた2週間ほど、日米両国での反響の相違を痛感しながら悲劇からのちょうど1ヵ月、改めて米側の日本や日米関係をよく知る識者たちに感想を尋ねてみた。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
岸田首相に〝退場勧告〟櫻井よしこ氏「本質を読みとれず大局観も欠く」安倍元首相の暗殺から2年間、政権運営に不信感
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月1日 11時47分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その5(最終回)日本との同盟を超重視
Japan In-depth / 2024年6月28日 19時0分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その3 中国こそが最大の脅威
Japan In-depth / 2024年6月27日 11時0分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その1 新文書が示す国際安全保障策
Japan In-depth / 2024年6月25日 23時0分
-
トランプ氏の有罪評決が不信を生む7つの理由
Japan In-depth / 2024年6月9日 13時0分
ランキング
-
1大分県宇佐市の強盗殺人、死刑判決の被告側が即日控訴…裁判長「被告が犯人と優に認められる」
読売新聞 / 2024年7月2日 22時9分
-
2マンションから転落疑いの女児死亡 意識不明で救急搬送 札幌
毎日新聞 / 2024年7月2日 21時19分
-
3能登半島地震 災害関連死 氏名初公表
テレ金NEWS NNN / 2024年7月2日 19時28分
-
4床には6メートルの亀裂 鉄筋もむき出しに… 万博会場のメタンガス爆発事故の現場公開 協会「安全対策を講じて開幕できる」
ABCニュース / 2024年7月2日 18時59分
-
5TDR、ショーキャストにも「空調服」導入進む X称賛の取り組み、広報「今年度は対象を拡大」
J-CASTニュース / 2024年7月2日 17時38分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください