安倍晋三氏を悼むアメリカ その1
Japan In-depth / 2022年9月18日 11時0分
「ここ10年ほど全世界でも最も傑出した政治リーダーは安倍氏だったといえる。遠大なビジョンを持った政治家というだけでなく熟練した外交活動家として日本の外交と資源を『自由で開かれたインド太平洋』構想と日米同盟の強化の実現へと投入し、成功した」
これほどの手放しともいえる賞賛の言葉はハドソン研究所日本部の上級研究員ジム・プリシュタップ氏の安倍評だった。同氏は東アジア、とくに日本の専門学者として国務省や国防総省の政策企画部門に勤務したほか、国防大学の教授を経て、ヘリテージ財団、ハドソン研究所など民間シンクタンクでの在勤も長い。日本では慶應大学で客員教授として教えたこともある。
プリシュタップ氏が安倍氏を国際的な背景で高く位置づけたが、確かにここ10年ほど世界の主要各国の指導者でも、世界的なリーダーシップとか国際的な構想という点でのこれぞ、という単一の人物の名はなかなか浮かんでこない。
それ以前の時代ならば、たとえば東西冷戦でソ連を崩壊に追いこんだアメリカのレーガン大統領、そのソ連の共産党体制を根本から変えようとしたゴルバチョフ書記長というような傑出した指導者の実績がすぐに連想される。だが近年はそうした例外的な指導者が不在のなかでは安倍氏の実績が光るということなのだろう。こうした考察は日本の中ではまず出にくい視点だといえよう。
(その2につづく)
◎この記事は雑誌WILLの2022年10月号掲載の古森義久氏の論文「ワシントン報告 安倍元総理の死―悲嘆にくれるアメリカ」の転載です。
トップ写真:国連総会開会中に米国副大統領ジョー ・ バイデン氏と会う安倍晋三首相(当時)2014年9月26日 アメリカ・ニューヨーク市
出典:Photo by Spencer Platt/Getty Images
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