沖縄知事選結果分析①「下地の乱」と自民党県連の混迷
Japan In-depth / 2022年9月22日 0時0分
目黒博(ジャーナリスト)
「目黒博のいちゃり場」
【まとめ】
・保守を分裂させた下地氏出馬は「自民党への自爆テロ」か。自民県連はパワー不足。
・10月23日投票の那覇市長選に向け、保守系の混乱は続く。
・自民県連の迷走と、政治と行政の「空洞化」に懸念の声。人材難と保守陣営の司令塔不在という構造問題の克服は容易でない。
9月11日(日)投開票の沖縄県知事選で、現職の玉城デニー氏が、自公推薦の佐喜真淳氏に6万5千票の大差をつけて再選された。ただし、玉城知事の信任投票と位置付けられた今回の選挙で、得票率は51%に過ぎず、「すれすれの信任」とも言える。実情は、保守分裂に助けられた「圧勝」だった。
無所属の下地幹郎氏出馬で、玉城氏が一気に優勢になり、知事選への有権者の興味は薄れた。統一地方選挙も重なったため、有権者の関心が地元の選挙に向かって、知事選は盛り上がらず、投票率は過去2番目の低さだった。
<なぜ下地幹郎氏は出馬したのか>
今回の知事選の最大の話題は、下地氏の出馬だった。当選の見込みがないにもかかわらず、保守を分裂させた彼の行動を奇異に感じた人は多い。
筆者自身は、「自民党への自爆テロ」だったと考える。
拙稿「争点なき沖縄県知事選の“怪”」(9月6日Japan In-depth掲載)で述べたように、この政治家は、カジノ・スキャンダルに関わり、維新の会を除名された。政党を渡り歩き、落選しては復活してきた、自称「ゾンビ政治家」下地氏も追い詰められる。
そこで、彼は自民党復党を目ざした。ところが、下地氏は、自民党と激しく対立してきたうえに、公明党とは犬猿の仲だ。自公体制を前提とする自民党にとって、彼の復党のハードルは高い。
それでも、経済界の重鎮、國場組会長の国場幸一氏らが下地氏を積極的に支援し、自民党に復党を働きかけた時期もあった。彼らが下地氏の行動力を評価しただけでなく、保守一本化を強く望む声があったからだ。
しかし、國場氏らも公明党の意向などを無視できず、次第に下地氏と距離を取り始める。
維新から追放された保守系の下地幹郎氏にとって、自民復党以外に政界で生き残る道はない。そこで、大博打を打ったのだろう。
知事選出馬を表明した際には、自民党への「脅し」と見る向きが多かった。彼自身も、仲介者が現れて同党と和解し、立候補を取り下げるシナリオを描いたのかもしれない。しかし、仲介者は現れなかった。
下地氏の支持者には、保守派主流から冷遇され、憤懣を抱える人が多い。彼らは少数だが、熱狂的だ。出馬表明で、そんな彼らを煽ってしまった下地氏は、引っ込みがつかなくなったのだろう。彼を受け入れない自民党への恨みもあった。自らの出馬によって佐喜真氏を惨敗させ、鬱憤を晴らしたかったのではないか。
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