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沖縄知事選結果分析①「下地の乱」と自民党県連の混迷

Japan In-depth / 2022年9月22日 0時0分

ただ、辺野古反対、普天間の軍民共用化など、大風呂敷の公約を自画自賛するパフォーマンスに、眉をひそめる保守系市民が多かった。選挙後、本人は「マングースになる」と気炎をあげるが、今や彼の立場は弱い。


<自民党県連の迷走>


7月22日の拙稿「参院選から見えた沖縄政治の迷走」(Japan In-depthに掲載)で既に述べたことだが、自民党県連による重要選挙の候補者選考は迷走し続けた。


まず、知事選にこだわった佐喜真氏が、7月の参議院議員選への出馬を固辞し、参院選と知事選の候補者決定が大幅に遅れた。問題は、同氏の「決断」に押し切られただけでなく、下地氏も抑え込めなかった、自民県連のパワー不足にある。


さらに、知事選と同日選の県議会議員補選でも、2人が立候補を目ざして調整が難航し、決着は告示日(9月2日)の4日前にずれ込む。しかも、擁立したのは2人とは別人の下地ななえ氏だった。


同氏は、エステサロンの経営者で、テレビでの露出が多いタレントだ。自民県連の中心メンバー國場幸之助衆議院議員が強く推したという。だが、土壇場での派手な女性の登場に、唖然とした陣営関係者は多い。果たして、「オール沖縄」が分裂したにもかかわらず、下地ななえ候補は3位に沈んだ。國場氏の責任を追及する声が出ている。


<佐喜真氏の限界>


自民党県連に問題があったとは言え、玉城知事に負けたのは佐喜真氏だ。彼の政治家としての実力の乏しさこそ、最大の敗因だ。


演説に精彩がなく、政策立案能力にも疑問符がつく。政府が最短でも12年後とする普天間の返還を、2030年までに実施すると突如言明したのは、安易すぎた。







▲写真 投票日前日の打ち上げ式(那覇市)での佐喜眞淳候補。2022年9月10日。著者撮影。


佐喜真候補は、前回知事選に落選後の3年間、政治活動をほとんどしていない。知事職を志すなら、毎日県内を視察し、政策を練り上げるべきだったろう。


旧統一教会関連のイベント参加も発覚し、「先輩議員に誘われた」と釈明したが、先輩に追随する姿勢も問題だ。琉球新報などの出口調査によれば、公明党支持層の30%余りが玉城氏に流れたという。創価学会会員は旧統一教会を嫌悪するので当然だろう。


それだけではない。同じ出口調査で、自民党支持層の20%以上が玉城氏に票を投じたことが分かる。佐喜真候補の失速は誰の目にも明らかで、陣営には沈滞ムードが漂っていた。


<自民党・保守系の見えない展望>


保守系の混迷はまだまだ続く。10月23日投票の那覇市長選に向けて、県連は前副市長の推薦を決定した。だが、陣営内には、故翁長前知事の側近だった同氏に不信を抱く人もいる。


そして、混乱する保守系の隙を突くように、ボクシング元世界王者の平仲明信氏が出馬を表明した。玉城デニー氏のようなタレント型政治家が当選を重ねることで、下地ななえ氏や平仲氏のようなタレントたちが、続々と政治家をめざす時代になったのだろうか。


行政経験者や有識者などから、自民党県連の迷走と、政治と行政の「空洞化」を懸念する声がある。しかし、人材難と保守陣営の司令塔不在という、構造的な問題を克服するのは容易ではない。


(続く)


トップ写真:選挙前日の打ち上げ式(那覇市)に駆け付ける下地幹郎候補。2022年9月10日。著者撮影。


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