微妙な中比関係
Japan In-depth / 2022年9月22日 11時0分
東南アジアにおける中国の経済的影響力について問われたカストロは、ASEANが中国にとって最大の貿易相手国であるとはいえ、フィリピンも他のASEAN諸国と同様、「中国が我々の唯一の顧客になってしまうことは望んでいない」と述べた。また、「貿易と安全保障について、多様性を確保することだ」と指摘した。
他のASEAN加盟国と同じように、フィリピンは米中の“二者択一”を避けるため、日本との関係を強化している。
今年4月、フィリピンと日本は初めて外相と防衛相による「2+2」会談を開催(c)している。マルコス大統領にとっては、米中とのバランスを取ることが最大の課題である。
実は、マルコス大統領は就任70日余りで、南シナ海の主権をめぐる中国への外交的抗議を52件行い、すでにドゥテルテ前大統領の在任中の中国への抗議の10分の1以上になっている(d)(ちなみに、同大統領は、6年間の在任中に388回も中国に抗議した)。
ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、フィリピンは現在、ASEANの中で最も「反中」的な国と見なされている。目下、ASEAN諸国の中で北京に対して厳しい態度をとっているのはフィリピンだけである。
9月13日、フィリピン外務省のテレシタ・ダザ報道官は、対中抗議の理由として、北京が南シナ海で海洋科学調査を行うなど「侵入的かつ違法な存在」であることを挙げた。
▲写真 中国大使館前で中国による南シナ海での海洋活動に抗議する人々(2022年7月12日 比・マニラ) 出典:Photo by Ezra Acayan/Getty Images
マルコス・ジュニアは、石油・ガス開発について中国と話し合う意思があると述べた。だが、一方、マルコスは、外国政権に領土を1インチたりとも譲らないと誓い、長年にわたる米比軍事同盟の維持を公約としている。
北京がASEAN諸国に対して、政治的しがらみのない無償援助を申し出ている。また、中国がフィリピンの6年連続最大の貿易相手国に浮上し、フィリピンの主要外資誘致国に浮上した。だが、フィリピン国民からは歓迎されていない。
2018年の若干古い世論調査によると、84%がドゥテルテの対中妥協政策に反対し、87%が占領された島を中国から奪還すると答えている。
また、以前から、中国は「9段線」(南シナ海のスプラトリー諸島・パラセル諸島の領有権、また両諸島周辺の領海、排他的経済水域、大陸棚等の海洋権益に関して、全域の権利)を主張している。先に触れたが、フィリピンは常設仲裁裁判所に南シナ海の領有権問題を提訴し、2016年7月に勝訴した。その際、中国共産党は、判決は「ただの紙屑」だと一蹴している。
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