「ゼロコロナ政策」で落ち込む中国経済
Japan In-depth / 2022年9月23日 7時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・新しい“節約志向”「ローコスト・ライフスタイル」は、中国経済への更なる脅威。
・極端な「ゼロコロナ政策」が消費低迷を招いた原因と言えるのではないか。
・医療、住宅、教育、交通への補助金による社会的セーフティネットを確立し、国民の貯蓄を減らす方向を目指す必要があるのでは。
周知の如く、習近平政権は、依然、都市部で厳しい「ゼロコロナ政策」を実施している。そのため、経済が回らない。
ここでは、いくつかの具体的な事例を挙げて、中国経済の現状を見てみよう。
第1に、中国の16歳~24歳の若者の失業率は8月に18.7%に達した(a)。特に、小売業や電子商取引業では多くの若者が“賃下げ”を余儀なくされている。主要38都市の平均賃金は今年第1四半期に1%減少した。そのためか、多くの若者は消費よりも貯蓄を優先する。
例えば、インフルエンサーのYang Jun(28歳。15万人以上のフォロワーを持つ)は、2019年にSNSで「低コスト研究所」を立ち上げた。Yangは支出を抑え、持ち物を中古品サイトで売って現金化しているという。また、Yangは、1日1杯のスターバックスコーヒーを飲む習慣をやめたと話している。
この新しい“節約志向”は、「ローコスト・ライフスタイル」を推奨するインフルエンサーによって増幅された。中国のSNSでは、最も生活費の高い上海で「1600元(約3万2000円)で1ヶ月暮らす方法」など節約術の議論で溢れている。
しかし、専門家によれば、こうした“節約志向”は、景気後退の一歩手前まで来ている中国経済(今年第2四半期の成長率が0.4%)への更なる脅威だという。
香港大学金融学科の陳志武教授は中国では「就職難と景気下押し圧力で、若者達はかつて経験したことのない不安感と不確実性を感じている」と指摘した。
第2に、中国経済の象徴とされる上海「陸家嘴」(未来的な高層ビル群で知られる上海の金融街)の現況で、経済の実態を垣間見ることができる(b)かもしれない。
特に、「正大広場」は「陸家嘴」の中心部に位置し、東方明珠タワーや大型ショッピングモールなどがある。だが、その中国1と称されるショッピングモールでは、3分の1の店舗が閉店してしまった。
▲写真 歩道橋に佇む上海市民(中国・上海、2022年6月6日) 出典:Photo by Hugo Hu/Getty Images
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